今や土地の余っている中途半端な田舎に大概存在する、ほぼ全品100円平日90円大手回転寿司チェーンの店舗。何だか知らないがあえてはすむかいに競合店が並んでいる場所すらある。どちらが後から建てたのかは知らないが実に好戦的だ。そんな世はまさに大回転寿司時代。某回転寿司チェーン店の厨房ではひたすらに働かされているカッパたちの姿があった。
朝から晩まで寿司を作り続け、店じまいをするとかっぱたちは近くの寮へと帰る。彼らに家はない。彼らの家は遠い遠い山奥の美しい川だ。だが人間たちによる自然破壊の影響によりそこで生きることはずいぶんと難しいことになってしまった。だから彼らはここにいる。この薄汚い田舎町に。
寮は小さく、部屋数も少ない。2人用の部屋を10人で使っている。寿司屋なだけあってまさに寿司詰め状態。カッパなのにタコ部屋いう有様。カッパたちは狭い部屋で身体を縮めながら眠る。辛い労働環境。カッパには人権がない。厨房の隙間からちらと覗いたホールには楽しそうに寿司をほおばる家族連れの姿。目を閉じればあの美しい故郷が浮かんでくる。そしてカッパの閉じた瞳からは美しいせせらぎのような涙が零れ落ちた。一人が涙を流しすすり泣けば、つられたように真っ暗な部屋に嗚咽が溢れる。ひとしきり泣いた後、最後にみんなで歌を歌う。明日も頑張ろう。生き抜こう。誇り高く。歌はもちろんあの歌。かーっぱかっぱかっぱのまーく…
来島は激怒した。必ず、かの邪智暴虐の店長を除かなければならぬと決意した。来島には経営がわからぬ。来島は、バイトのチーフである。来島は人間だがわけあってカッパたちに混ざって魚をさばき、寿司を握って暮して来た。正確には寿司を握るマシンを操作して暮して来た。けれども邪悪に対しては、人一倍に敏感であった。そしてそこそこカリスマ性もあったので諦観し隷属する道を選んだカッパたちの前に立つとこういった。
「こんな腐った社会ぶっ壊してやるっスよ!」 彼女は腐った○○をぶっ壊すとかそういうフレーズにたいへん弱かった。そして彼女は競合店の斜め向かいに店舗を構える企業と同じぐらいに好戦的であった。
行き所なく徹底的に痛めつけられた社会的弱者の怒りを向ける矛先が、「社会」という大きく漠然としたところにしかないのも事実である。腐った○○をぶっ壊すとかそういうフレーズは社会に絶望した者にはてきめんに効果を発揮した。そしてかっぱたちは来島に賛同し、寿司のかわりに、希望と革命のための暴力を握る決意をした。これがかの有名なかっぱ一揆である。
もしもここが来島受けサイトでなかったら、もしも寿司をたらふく食べながらこの話を考えた二人がハッピーエンド主義者だったなら、なにかが変わったかもしれない。でも、そうはならなかった。ならなかったんだよ、ロック。だからこの話はここでお終いなんだ。(ブララグ3巻)
反逆したカッパたちはかっぱ巻となり回転レールへと乗せられた。ひとりになった来島に、店長――ネームプレートには坂田と書いてある――は気だるげに言った。
「来島、お前、ソープ行き決定」




友達に銀魂完結篇を見せたら序盤の映画泥棒を執拗にぶっ叩く銀時のこと「風俗店で調子こいちゃった客を別室でとっちめる店員みたい(意訳)」ってえらい褒めてたからのソープ行きネタ。