セーターを貰った。嬉しい。滅多にプレゼントをくれない先輩が。
薄手だから、春先でも着れる。洗うのも気を付けた。
のに。

引っ張られて、やめてと言う制止も虚しく、編目の繊維は盛大に伸ばされ引き裂かれぶちぶちと千切れた。露になった肩がひんやりした空気に触れる。これがいつもの服だったらだまっていたけど、許せなかった。考えるより手が先に出た。静かに見下ろす彼の頬をしたたかに打っていた。
手首をしっかり掴まれてから、しまったと悔いた。彼は笑っていた。「怒ってんの?」こっちの台詞だと思った。きっと痣になるだろう、力がどんどん込められていた。
「お前が本気になるのって、あいつ絡みだろ」完全に見透かされていた。裂いたのも、わざとかもしれない。セーターの残骸を彼は、私の口に押し込んでから乱暴した。息苦しさに、涙が出た。

解放されてからはいつも優しい。そっと抱き起こして拭いてくれたりする。酷く効果的に傷つける方法を知っているからだ。深く抉られた傷口に、彼の柔らかい声色は、じんわり染み込ませる薬品のように肌に滲むのだ。ごめんな、と彼は言って、次いで「おんなじの買ってやるよ」。
なんて嬉しそうに言うのだろうと、見やった彼の服を見る眼は恐ろしかった。