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今回は創さんご本人の提案で小話の執筆をばしてみた訳だけども…
文才っつーもんが微塵もない俺には酷な話で…取り敢えず、今後続くかは別としてちぃとばっかし書き殴ってみました、と。
文句だのなんだのは一切受け付けないんで、よろしく!
っつー事で創さんとの出会いとか、そんな感じ(笑)









創と出会ったのは、まだ寒さが肌を刺す一月も終わりの頃だった。
革のジャケットの襟を、首元を寒さから守る様に片手で引き寄せながら、仕事帰りに毎日の様に通うブックカフェへと足早に歩く。吐く息が白い。この頃は早く暖かくなんねぇもんかと思ってたもんだ。
ブックカフェに通うようになったのはつい最近。喫煙も出来て珈琲も美味い、そして何より店主の幅広い本選びのセンス、でぷらっと立ち寄って以来、すっかり常連になりつつある。店主にも3度目以降は顔を覚えられ、いつも同じ時間帯に、顔を合わせる客とも顔馴染みになり始めた。
カウンター席しかないそのカフェ。お世辞にも広くはないが、逆にそれがいい。店主や客とのアットホームな感じが良いんだ。常連になり始めてからは店に入ると『いらっしゃい』ではなく『おかえり』と声を掛けられるようになった。自宅とはまた違う、安堵感。落ち着く場所だ。
いつもの様に店内に足を踏み入れる。店主と先客が二人。一人は見知った顔、年上のユウキさん。名前なんだか苗字なんだかは知らない。そしてもう一人は新たな客人。これが創だった。しかも俺の指定席に座ってやがる。が、仕方ない。わざわざ押し退けてまで座る程、その場所に愛着がある訳じゃない。
7席しかないカウンター。壁一面の本棚から一冊本を手に取り、ユウキさんの隣、入口から一番近い席へ、一つ空けて座る。
「おかえり。取られちまったなァ、彩人の指定席」
揶揄かうように笑いながら、座ると隣から声が掛かる。
「いや、別にそーいう訳じゃねぇしよ」
ジャケットを脱いで、ポケットから煙草を出しつつユウキさんに応えると、その会話を聞いていた一番奥の俺の指定席に座っていた創が、慌てた様子立ち上がり、
「悪ぃ、指定があるなんて知らなくてよ、アンタこっち座れよ。すぐ退くから」
と、読み掛けの本を片手に荷物を纏め始めて、
「ユウキさんが余計な事言うから気遣わせちまったじゃんか。いいっていいって、別に何処座ったってここじゃ一緒だしよ」
ユウキさんへ文句を言いつつ、わざわざ席を立ってくれた創に席を譲る。すると、
「狭い店で悪かったなぁ?今日からお前にゃカフェラテしか出さねぇからな」
挽き立ての珈琲を持った店主が俺の前にカップを置きながら、意地の悪い事を言う。飲めない事はないが、俺が珈琲はブラック好きな事を知っての言葉だ。
「そうは言ってねぇじゃん、勘弁してよーラテなんかにされたら俺リバっちまうって」
泣き真似を交えつつ、抗議の声を上げてやる。横ではユウキさんがお前が悪いとばかりに爆笑していた。そして、その向こうで創も、声を押し殺して笑っていた。





これが、創との初めての出会い。いや、接触というべきかもしれない。これ以降、創とも毎日の様に顔を合わせるようになった。と、同時に俺の指定席も戻ってきた。その席から一つ空けて創はちゃっかり指定席を作ったようだ。
顔を合わせる内、名前を知り、歳を知り………歳が同じ事もあり、親しくなるのに時間は掛からなかった。
創からの誘いを切っ掛けに一緒に晩飯を食いに行ったり、酒を飲みに行くようになったり、カフェ以外で顔を合わせる時間も次第に増えていった。
ある晩の事、いつもの様に飲みに行って、お互い翌日休みってのもあって時間を気にせず今日は飲み明かすぞ、とか二人で張り切ってた。そんな日。
俺とは違い、酒であまりやらかした事のない創は普段飲む量をセーブしてる。けれど、今日は明らかにその量を越えて飲んでいた。
酒の量がお互い進むにつれ、お互い今までは触れて来なかった話題や、言わなかった事を好き好きに話し出した。人間が大人になって、唯一理性を喪うのが酒を飲んだ時なのかもしれない。
勿論その話は恋愛遍歴にも及び、
「今付き合ってるやつとかいねぇの?」
少し呂律が怪しいのか、創の口からいつもよりゆっくりと言葉が紡がれる。
「そんなモンいたらカフェに通ってねぇし、こうして飯食いに来たり、飲み明かしたりなんか出来ねぇだろ」
ジョッキに残ったビールを呷る。一瞬、創の顔が安堵したように見えたのは気の所為か。敢えてそこには触れず、お前はよ、と返した。
「最近、気になってる奴はいるんだけどさ………」
どうも歯切れが悪い。自信が無いのか、余程の高嶺の花なのか、ノンケなのか。どれにしたって、
「お前に告られたら誰だってNOとは言わねぇだろ、色男」
そう思ったから勇気づけるつもりで言った。が、自分がその対象だなんてまさか思っていなかった。
そうか?なんてこの時は笑って返ってきて、その後もくだらない笑い話を続け、朝方まで飲んでいた。





あの後どうやって帰ってきたのか、あまり記憶にはないが、目が覚めるとベッドの上にはいた。と、言う事はタクシーに放り込まれたか、なんとか自力で帰ってきたのか。俯せていた体を転がし、天井を見上げてやっと気づいた。自宅じゃない事に。慌てて起き上がって、脳天に響く二日酔い特有の頭痛。再びベッドへ蹲った所で、頭上から声が降ってきた。
「お目覚めか、彩ちゃん」
聞き覚えのある声。創だ。
少し安堵した。誰か知らないお姉さまやらお兄さんやらをナンパして、家へ転がり込んだとか、お持ち帰られた訳じゃない事に。
飲みすぎた時の悪癖で、人肌が恋しくなって誰彼構わずベタベタする事がある。恋人がいれば、時間構わず出るまで電話し続けるのを友人に止められたなんてのを、後日聞かされる事もあった。今回は、きっと何もしてねぇよな?と思いつつ、
「悪ぃ、迷惑掛けたな」
なんとか顔を上げ、頭痛を宥めるようにこめかみを押さえた。
「どうせ覚えてねぇんだろ?」
二日酔いとかないんだろうか、にやにやと水のボトルを差し出された。サンキュと受け取りつつ、まぁ…と問に曖昧に返した。
「本当に覚えてねぇのかよ?………じゃあ昨日俺が言った事も?」
妙に真剣な顔つきで、キャップを開ける俺を見る。何を言われたんだろうか。全く思い出せない。暫く考え込んでいると、盛大な溜息が聞こえ、次いで





「俺、お前に好きだっつったんだけど?」





思考が停止した。今何を言った此奴、と。気の所為かとも思ったが真剣な眼差しが明らかに本気。
水を飲もうと傾けたボトルから少し、水が零れ落ちる。
「あっ!テメェ、人のベッドに!」
慌ててティッシュを取り、吸収されかけた水分を拭き取る。
「わ、悪ぃ………」
俺も慌てて水のボトルをサイドボードへ置き、素直に謝った。正直、何に対してか、よく分からなくなってた。それを察したのか、
「別に返事を急ぐつもりはねぇし、彩人ん中で答えが出るまでは今まで通りで構わねぇよ。でも俺、言ったからには口説くから、そのつもりでいろよ?」
と、言われ、宣戦布告と解釈すべきか。妙に冷静な部分でそう考える自分がいた。












って事で、中途半端におしまい(笑)



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