そしてまた、改めて明かりに照らされた男の顔も、とても美しかった。
やっぱりこんなに綺麗な方は今まで見たことがない、叶華は思う。

「…うん?どうかしたかい?」

男の言葉に、はっと我に返る。
その麗しさについつい見惚れてしまっていたなんて、どの口が言えようか。

「な、何でもございません。…す、直ぐに傷の手当てをさせて頂きますね」

慌てて薬箱から、消毒液やら脱脂綿やらを取り出し、先程までの邪念を振り払うかの如く、叶華は男の傷の手当てに集中する。
幸い、大した傷は見当たらなかった。鋭利な刃物で斬りつけられたような斬傷以外は…。

「この傷…」

余り深くはないが、かなりの出血がある。先ず最初に綿布を傷口に当て止血をした。その後で消毒液に浸した脱脂綿をピンセットで摘むと、そっとその部分に当てる。
すると一瞬、男がその綺麗な顔を歪ませた。

「ごめんなさい、染みましたか?」
「いや…、大丈夫だ。少しだけ消毒液の冷たさに驚いただけだよ。…気にしないで、続けておくれ」
「…はい」

再び、傷口に消毒液を染み込ませるように押し当てていく。
暴かれた男の身体には、今回負った傷以外にも無数の傷痕が残っていた。大きなものから、小さなものまで。どれも古く、痣のようにはなっていたが…。
一体、どうやったら、こんなにも傷をつくれるのだろうか?

「…もしかして、以前にも、このようなことがあったのですか?」

叶華の問い掛けに対し、男は苦笑を浮かべる。

「…色々あってね。まぁ、一つ言えるのは、どれも自慢出来るような負傷ではないということかな」

男に曖昧に言葉を返されて、叶華は詳細を尋ねることを止めてしまった。勿論、気にはならなかったと言ったら、嘘になる。だが、それ以上詳しく聞いてはいけないような、そんな気がしたのだ。

消毒をし終えると、薄く清潔な綿布で患部を覆い、上から包帯をしっかりと巻く。巻き残った包帯の端は、邪魔にならないよう小さな蝶々結びで止めた。

「これで出来上がりです。此処から出られましたら、ちゃんとしたお医者さんで診て貰って下さいね」
「ありがとう」

にこりと素敵な笑顔を向けられて、叶華の鼓動が大きく跳ねる。
男は先程脱いだシャツを元通りに身に付け、身なりを整えると、不意に叶華に尋ねてきた。


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