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目が覚めると、叶華は誰かの腕の中に居た。
温かくて、優しくて…。ふわふわした感覚が、全身を包んでいる。
これは母親の腕の中なのだろうか?
気持ち良くて、叶華はその胸に頭を擦り寄せる。

「…ん?」

母親の温もりにしては、多少の違和感を覚えた。
確かに温かいのだけど、柔らかくはない感触にはっとして、叶華ははっきりと覚醒する。
怖ず怖ずと顔を上げると、優しげな眼差しでこちらを見つめる男と目が合った。どうやら自分より先に起きて、寝顔を眺めていたらしい。
そのことに気付くと、何だか、堪らなく居たたまれない気分になった。

「…すみません。僕、寝入ってしまっていたみたいで」
「構わないよ。お陰で、君の可愛い寝顔を拝むことが出来たからね」
「そんなこと…」
「それより、昨晩はすまなかったね。どうやら、少々やり過ぎてしまったようだ」
「い、いえ…っ」

紡がれた男の言葉に、昨夜の記憶が俄かに、且つ鮮明に戻ってくる。
あれから、かたちを変えて何度か熱を交わし合い、その後、口淫のやり方まで教わってしまったのだ。廓の中でも、無論教わったことがあったのだが、実際に相手に施すのは、初めての体験だった。

それから…――。

甦る記憶に、思わず叶華は赤面し、清水の胸に伏せるように、顔を埋める。
寄せた男の肌は、思いの外、心地良くて、途端に離れがたくなってしまいそうだった。

障子越しに感じる外の明るさが、朝の到来を告げている。
この感触をずっと味わっていたいけど、もうそろそろ、起きなくては…。
名残惜しい気持ちを押し殺し、叶華は男の腕から抜け出そうとした。

「まだ、いいだろう?…俄雨」

腕を掴み、引き留めてくる清水に、叶華は微笑みながら首を横に振る。

「お仕事に遅れてしまいますよ?」

そう伝えれば、渋々といった風ではあったがその手を離してくれた。

乱れた襦袢の前を合わせながら、そっと褥から出る。身体の中に昨晩の行為の名残を感じて、また恥ずかしくなる。
叶華は手早く着物を羽織り、帯を結わえると、男の身支度を手伝った。


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