シリアス全開モードの私としてエールとプレセアのじゃんけんに参加するつもりもなくただ呆然と眺めていたのだけれど、一体全体どうしたものだろうか。入り口からすぐそこを曲がらず直進直進と行き止まりに突き当たり、もうやめてくれとばかりに単独行動をしようとすればゼロスに止められ、やっとの思いでたどり着いたって言うのに…!



「 ニャー、邪魔な壁を焼却完了!これで先に進めちゃいますよ! 」



ニャーじゃねえ。張り倒すぞ。じゃなかった、まずいまずい。せめてエールとプレセアの前くらいではちゃんとしなきゃ。思わず内心で暴言を吐いちゃったけれど、私達の目の前でジャニスとちっこいのが背をむけていました。背後からけしかけていいですかね?



「 あー、ひょっとしてあんたがジャニス?世界樹を傷つけようとしているっていう… 」



相変わらずな赤い水玉シャツを着こなしたまま振り返るジャニス。やっぱり目がちかちかする。そのシャツを何とかしてくれないだろうか。目がやられてしまうよ!



「 何者だ?フー・アー・ユー! 」

「 私達はアドリビトムというギルドの者です。どうか、世界樹を傷つけずにこのままお戻りください 」




丁寧に言ったプレセアに比べてしまえばジャニスの水玉と日本人じみた英語の区切り方に物申したくなる。もうちょっとなんとかならんのですか、その二つ!スマートに聞こえもよく発音するとか!なんでそうやって大きく区切っちゃったのかなあ!そういう趣味ですか!?



「 馬鹿め!イッツ・ア・フーリッシュ!ここ一帯のマナ濃度が減少すれば今まで以上にラルヴァが生産できる 」



何でさっきから二回同じことを違う言葉で言うんですか。そう突っ込む間もなく顎を撫でながらジャニスはわたし達の方を向いて誇らしげに笑う



「 確かにこの土地はマナを失い、やせ衰えるであろう 」



そう断言してまでも。ジャニスは誇らしそうに、自分の研究に間違いはないとばかりに自信を持ってそういうのだ。その言葉の意味を軽く思っているわけでもなさそうな表情にきつく攻める事も出来なくて、私は口を噤んだ



「 だが、それを補ってなお余る豊かさを私は人々に提供出来るのだ!ドゥ・ユー・アンダスタン? 」

「 させません。マナは大地の恵み… 」



自分の武器に手をかけるプレセアに私は、腕を組んだままその状況を見守る。なんとも言いがたいその状況にちっこいのが目をカッと開いて腕を大きく振り回して指を差した。それも、私達の後ろに



「 あ〜!!魔物が近づいてくるぅ!! 」



だなんてありきたりな台詞に私以外が振り返って「え?」と呟いてしまった。なんて皆は素直なんだろう。いや、確かに魔物だったら本当に大変だし、なによりも、戦闘を早く終わらせて追いかけなくちゃいけないんだけど



「 先生! 」

「 ゲッタウェ〜イ!! 」



ざまあみろとばかりに笑みを浮かべたちっこいの。
あいつはいつかこの手で謝罪させてあげるとして



「 あっ、あいつら!! 」

「 行っちゃったねえ… 」

「 俺さまとした事が、こんな古典的な手にやられるなんて 」



俺様カッコ悪ぃー、とうな垂れたゼロスを横目に私はそのままぼうっと駆け抜けて行った場所を見ていた。あの時私は彼らを止めるべきだったんだろうか。そんな事を思いながら入り口を見ているとまたあの青い目が私を見ていて気付かない振りをしながらそらす。



「 浅葱さん? 」

「 ん? 」

「 どうかしましたか 」

「 ううん。なんでもないよ 」



後ろを振り向きたくなくて、そう答えるだけ答えて、また先を見る。何かあるような何もないようなその視界に沢山の苔と、優しい空気がある気がした。例えばそれが気のせいだとしても、それで良いって言うんだろうなあ。私は。



( 身体と心が真逆のことをしていた )
( でも、それだけのことで )
( それ以上のこともなく )

11/0204.




- ナノ -