「 う、うわあああぁぁぁあああああ! 」

「 えっへへ〜、ぺたぺたぺたぺたぺた! 」

「 あれ?楽しそうだなあ 」



そこには少女に追い回される蒼白の青年がいた。名前を入れれば、邪悪な顔をしたアニスに追い回される女性恐怖症の症状真っ只中のガイがいた。なにしてんだ、楽しそうだな、混ぜろ。と言ってもガイをはめる手伝いしかできないので見ていたのだけれども、そろそろガイの表情が本気で辛そうなのでそろそろと目にかかろうかと思ったときに、赤が視界に入る



「 ガイって、本当に女が嫌いなんだなあ 」

「 違う!女性は大好きだ! 」

「 ガイ、一歩間違えたら騎士団とかに取り締まられちゃうよ 」

「 だったらアニスちゃんがとりしまっちゃいまーす 」

「 やめろおおおおおおお! 」



元気が良いなあ。何か良いことでもあったんだろうかねえ、だなんてすずちゃんが入れてくれた緑茶を飲みながら微笑ましく見守っていると向こう側にいつものメンバーが見えた。ということは軽く如何わしい話でもしていたんじゃないだろうかと思ってしまう私は、変態ではない。いま、断言しておこう



「 ルーク。なんで、アニスによってガイが追い回されてるの? 」

「 えっと、始めは俺も含めてチェスターとかと話してたんだよ。あそこのメンバーと 」

「 ふむ… 」



あそこのメンバー。ユーリ、ゼロス、スパーダ、チェスター、そしてガイとルーク。なんというかまともな話になる気がしない。絶対純粋な女の子には聞けなさそうな…いや、でも結構子供っぽいからそこまで酷い事にはなってないとは思うんだけど



「 じゃあ、アニスは何を聞いたの? 」

「 そうだった!ねえ、聞いて! 」

「 うん、聞いてる聞いてる 」

「 こーんなに可愛いアニスちゃんにガキっていうんだよ?酷くない? 」

「 そうだねぇ、小さくても乙女だもんなあ 」



大人とも子供とも言わなくてすむ言葉『乙女』。今吐き出した私には鳥肌が立つサービスがついているけれど、それはしょうがない。他の人が言っているのを聞くのはなれているけれど自分が言うとなれば別だ。吐き気がするほどに鳥肌が立った。なれないことはするもんじゃないや



「 言ったとしたらスパーダあたりか。でも、勝てないと思ったからってガイを苛めるのもよくないよ? 」

「 浅葱だって噂されてたのに? 」

「 ………ちょっとそこの若草、少し話し合おうか 」

「 それは話し合いの手じゃねェだろうがッ!しっかり柄を握んな! 」

「 いや、ほら、手が滑るって事も人間ありえるだろう? 」

「 ぜってェ納得しねェぞ! 」



キラーフル装備事件は私にとっての黒歴史だ。それを彼が話そうものならば私はどんな手を使ってでも彼の口をホッチキスで止めたり、プチお裁縫セットで縫っちゃったり、どんな過激条件においても私は防いでみせる!



「 っていうか、ゼロスがそこのメンバーの中で楽しそうなのは珍しい。あれか。女の子が最近つれないから乗り換えたのか。元気が良いねえ 」

「 ちょ!それすっごい勘違いだから!やめて!そういう想像されたくない!しかも元気が良いとかなにそれ!?俺様ちょーショックー 」

「 まあ、それはどうでも良いとして。結局何の話してたんだ?大方誰が好みかとかそんなだと想像してみたけれど、確かに選り取り見取りだとおもうよ? 」

「 まあ、そうなんだけどよォ。って、待て。なんでそうも簡単に入ってきてんだ! 」

「 浅葱ちゃんなら大歓迎! 」

「 じゃあ、いいや 」

「 冷たい! 」



男の子の内緒の話ってなんか可愛くて微笑ましいからなんともいえない気になるんだけれどね。しかも話していることが案外普通だったから、なんか微笑ましくなっちゃって一歩後ろに下がるとつかれきったガイがいた。お疲れ様です。でもいいだろう?女性大好きなんだから追いかけられたくらい



「 そういや、ガイは女性恐怖症なのになんで浅葱には症状がでねえんだ? 」

「 チェスターくんのいう事も確かだねえ。浅葱ちゃんはあからさまに女性でしょうに 」

「 理由はわからないんだが、 」

「 触れちゃうんだよねぇ。まあ、女っぽくないししょうがないとは思ってるよ? 」

「 案外ざっくりだなあ、おい 」

「 私、結構淡白な性格してるから。それに淡白すぎて性格悪いんでね、こうでもしないと一つのことに縛られるのもあって 」



ちょっとねえ、と適当に濁して置くと後ろから私を呼ぶ声が聞こえて振り返るとティアがいた。スパーダはしっかり彼女のメロンを見ているので思わずスリッドの入っているほうの足で若草の顎先を蹴っ飛ばしながら、美人の方を向いた



「 どうしたの?ティア 」

「 パニールに買出しを頼まれたんだけど、浅葱は、今忙しいわよね 」

「 ううん。暇だよ、というかすぐに行こう!ティアに魔の手が伸びないうちに 」

「 え? 」

「 くそ、てめェ 」

「 そこから動いたら術発動するよ?クラトスが 」

「 ! 」



あの守護神パパトスはだいたい私が買い物に行く時にこっそりついてきてくれているのを知っている。たまに子供に指差されて戸惑ったり、子供を見て微笑んだりしているのをちゃんと目撃している私としては、彼の存在に気付かないはずがない。



「 あ、そういえば、何かほしいものとかある?ついでに買ってくるんだけど 」

「 だったら、俺様浅葱ちゃんとデー 」

「 ジャッジメント! 」

「 マジックシールドォッ!くそ、本当にいやがった! 」

「 ないみたいだね。ティア行こうか 」

「 …そうね 」

「 そういえばファンシーショップに用があったんだった。ティアも一緒に来てくれるよね? 」

「 …え!あ、も、もちろ、い、いえ、浅葱が行きたいなら、一緒に行くわよ 」



やっぱり可愛いもの好きなんだね、ティア。ほんのりと頬を染めて戸惑ったティアに見事に胸を貫かれた私は全力で笑った。この人本当にかわいい!なんだか知らないくらい物凄く可愛い!ツンデレとかそういう次元じゃない…あとで何か可愛いもの買ってあげよう。そのためだったらファンシーショップだって私は耐えられる



( ティア、このうさぎとリスのぬいぐるみどっちが可愛いと思う? )
( え、う、うさぎが可愛いと思うけど )
( じゃあ、こっちのうさぎをティアに。りすはエールに買って帰ろうかなあ )

11/0130.




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