ベットの上のシーツを剥ぎ取る。そして、新しいシーツを広げ皺なく伸ばす。その広げる瞬間がふわって宙に白がいっぱいになってなんだかうきうきするような気がして広げるのが一番楽しい。チャットが言うには「家事かギルドの仕事をこなしてくれればいいですよ」と言っていたけれど、仕事を午前か午後に回してこうやってパニールの手伝いをするのは楽しい。あいている頭で今後の戦いや嘘の使いまわしを考えられるからだ
「 ふふふ、こうしている姿はどうみても女の子なのにねえ 」
「 別に男だと思われても支障はないんだけどねえ 」
なにより部屋に個別のシャワーついてたからそう思われても問題はないけれどあまり必要のないものまで思われるとあとで面倒な気がするので一応誤解は解いてみたりはするけれど。実際に勘違いしてくれる人は多いみたいで、最近その誤解を解くのが面倒になってきてはいるんだけど
「 回収したシーツは洗濯かな? 」
「 はい、お願いします 」
「 ああ 」
「 それでは、お昼の準備をしてきますね 」
「 ん 」
引き剥がしたシーツをかごの中に放り投げる作業も何回かやればなれてくるもので。ゴールを見ずにバスケットボールを投げ入れるような感覚で白いシーツが吸い込まれていくようで楽しい。家事というお仕事は体力を使うけれどはじめは楽しいもの。白いシーツがかごの中に落ち着くと、妖精のような服を身にまとい赤い髪を揺らした少女が見えた。
「 …浅葱、今遊んでたわね? 」
「 今のは作業工程だ 」
「 遊んでた! 」
「 時間短縮だって 」
むすっとした表情でそういってくるルビアに私は息を吐きつつシーツを引き剥がし再び投げ入れる。
「 正義感を振りかざすさいには場合ってものを考えような、ルビア 」
「 なによ、遊んでたくせに! 」
「 いや遊んでないから 」
「 遊んでたの! 」
「 あー、わかった。遊んでたってことでいいから、面倒だし 」
「 面倒って失礼よ!? 」
「
ですよねー 」
ピッとシーツの端を引っ張る。隣でルビアが不満そうな表情で私を見つめてきているけれどまあそこはスルーしておこう。きっと世の中にも不満が沢山あるんだろうし、今更そんな不満をぶつけられたところでさほど気にするわけでもない。あれ?これは世界財政とか全然関係ない不満だよね?遊んでたかそうじゃないかって話だろうし
「 もう!浅葱は素直じゃないわね 」
「 へ? 」
「 遊びたいならそう言えばいいのよ 」
となりでぶわっとシーツを広げたルビアが視界に入る。もしかしてこれはルビアの世話焼きさんなフラグを立てられている気がするんですが。確かにルビアはちょっと意地っ張りで強がりさんなところもあるけれど面度見も良くて…ああ、そうかこの船にいる人ってほとんど良い人だった
「 これが終われば遊べるわ。勿論、あたしとも遊ぶの。いいわね? 」
「 …ルビア、此処に何しに来たんだ… 」
「 カイウスが浅葱と仕事に行きたいって言うから探してたら、こんな所で家事やってるんだもの。手伝うしかないじゃない 」
「 何でカイウスが? 」
シーツを織り込みながら聞くと、ルビアがため息をつく。ため息を疲れるようなことを聞いたらしい。説明するのめんどくさいなあ早く分かれよこの屑。とか思われたんだろうか。
自分の想像で傷つきそうになるんだがこれどういうことだ。なんか突き刺さったぞ。涙でそう。
「 さっき、浅葱が移動した後みんなで浅葱を仕事に連れて行きたい人でじゃんけんしたの 」
「 で、負けた人が連れて行こうと? 」
「 もう少し前向きでいいと思うわよ?まあ、それでカイウスが勝って浅葱と仕事だーって喜んでたのに、本人がその場にいないんだから探したわ 」
仕事に連れて行きたくないけど、みんなにジャンケンで負けたからしょうがねえ連れて行ってやるか。とかそんな感じで連れて行ってくれようとしたんじゃないの?え、優しさですか。それとも珍しく好かれたんですか。私反感なら買っていた気がするんだけど、主にキールとかキールとかキールとか。でもあの子もいい子だしな…
「 と言われても、この後シーツを洗濯だけどな 」
「 …洗濯している間に行けばいいのよ!そうしたら帰ってきて干せば… 」
「 …明日とかじゃ駄目か? 」
「 だって、カイウスが 」
このカイウス大好きさんめ!急いだとしても午後になるのは間違いないし、何しろ全員分のシーツの洗濯を干すともなるとさらに時間を奪われていくのはわかるので、ああもうどうしようかなあ。確かに連れて行ってくれるなら助かると言えば助かるし。
「 行ってきていいですよ 」
「 パニール… 」
「 せっかくですもの。それにお洗濯は明日にしましょうね 」
「 ほら、浅葱行くわよ! 」
「 せめて、洗濯機までシーツ運ばないと… 」
「 もう、しょうがないわね 」
腰に手を当ててそういった神官見習いルビア。確か此処にいる理由は旅行費が足りなかったという事だった気がする。確かにこの世話焼き加減を見れば少し気が強くて反発的なところもあるけれど、この子に導かれる人がいるならばそれはある種人生に退屈しなさそうだ。
「 浅葱、なに考えてるの?早く運んで仕事に行くんだから 」
「 はいはい、お嬢さん 」
「 なっ…! 」
ルビアの横を通り過ぎるだけ。だけれど、それは歳相応の少女の顔で。腕は少し重いけれど、ルビアの手からかごを奪い去るとルビアが慌てたように叫ぶ。手伝ってもらったのに此処までさせるわけにはいかないと思っただけでその重みなんてあまり感じない気がして余裕めいたその心境に口元がふわりと歪む
「 ルビア、早く行こうか! 」
「 あたしだってかごは持てるわ! 」
「 じゃあ私は軽い筋トレがわりだ 」
「 …浅葱ったら! 」
「 カイウスに準備させといてくれ 」
お言葉に甘えて( 両腕にかごで戦えそうですねとチャットが言う )
( それに思いっきり出来るか!と突っ込んでおいた )
( 多分かごの耐久力はないとおもう )
10/0813.
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