赤いツンテールが青い空や海をバックにして揺れる。サラサラと揺れる毛先が羨ましくて、ほんの少し眩しくて目を細めるとナナリーが笑った。あれだけ握られていた指先も今は痛みもなく骨に異常もないらしく、色の変化も脹れている様子もないためにほんの少し安心しています。
「 船長さん、エール、浅葱。あたしは…帰るよ 」
「 ああ 」
「 ハロルドを探す手伝いをしてくれてありがとう 」
「 まあ…、依頼は依頼ですから… 」
しぶしぶといった様子で言うチャットの表情はふてくされていて、ナナリーが優しい表情を苦笑に変えた。
「 それと、ハロルド。もう一度、ショーに謝っておくからほとぼり冷めた頃に戻っておいで 」
「 言ったでしょ。帰らないって♪ 」
「 あと、カイルとリアラを責任持って見てあげなよ。複雑な事情があるらしいから 」
「 わかってるわよ。じゃ、見送るわ〜 」
そう歩き始めたハロルドとナナリーの足音にエールも見送ってくる、と呟いて追いかける。随分と仲良くなったんだろうなあ。そこまでなついちゃったらお姉ちゃんそんなに大事じゃないよね?なんてネガティブなことを考えながら、ゆっくりと微笑む
「 …え、えっと、あの、いいですか! 」
「 へ?あ、カイル… 」
カイル。
確かに私はそう口走った。知っているからそうであって、この子は私の姿を今はじめて見たのかもしれないのに。
まずい、と思った瞬間に冷や汗が首筋を撫でるように駆け抜けていく
「 リアラから聞いたんですか? 」
「 いや、それは名前だけ。あとは見慣れない子だったし、ナナリーの傍にいたから…ある意味、勘かな 」
「 勘でそこまでわかったんですか!?へえ、すごいなあ! 」
目をキラキラと輝かせた少年、カイル。
忘れていたけれど、この子案外騙しやすかったんだった。
「 私は、浅葱。よろしく 」
「 はい!あの、オレ、英雄になる為に頑張ってるんです!だから、道中困った事があったら、何でもオレに言って下さい 」
「 はは、カイルって面白いねえ。自分が困ってるんだから、多少は他の人に頼ってもいいんだよ。私とかでも構わないし 」
「 …でも、 」
「 あと敬語なーし。それと、うーん…何かあったら相談する事 」
そういいながら笑みを作ってカイルの頭に手を伸ばす。そのまま撫でてみると少し固めの金髪の髪がわしゃわしゃと揺れて、カイルがくすぐったそうに目を細める。カイウスとは違う感じの犬みたいで可愛い。このっこの!と撫でるとカイルが嬉しそうに、真っ直ぐな笑みを浮かべた
「 浅葱さんって、姉さんみたいだねっ 」
「 義理の妹は沢山いるからな。私の事もそう呼んでくれたって構わないぞ? 」
「 本当?! 」
「 うん。それに、このギルドにいる人は皆家族だって教えてくれた優しい人がいるからね 」
英雄を目指す純真な少年はその髪を揺らし、私はゆっくりと微笑んだ
「 だから、リアラもカイルも私の家族だよ 」
パニールの理想に入るんだよ。あの人の優しい想像図の中に入っているんだから。遠慮しないで甘えたら良いんだ。迷惑はかけて当たり前だと言ったあの人にとって、此処は大切で大事だから。そして、私はそのみんなのお姉ちゃんだって教えてくれたから
「 へへっ、なんだかくすぐったいや 」
「 ふふ、 」
目を伏せながら頭を掻いた、その姿
「 浅葱姉さん 」
姿かたちは違うのに、少し前のことを思い出した。エールが私にむかってにぃって悪戯っぽく笑って、真っ直ぐとその言葉の意味を受け止めてはじめて「おねえちゃん」ってたどたどしく私の事を呼んだあの日を
「 なあに? 」
思い出した日が、くすぐったい( くすぐったそうに笑うカイルと私 )
( 遠くからムスッとしたように私の手をとったエール )
( その顔は、あの頃より成長した表情で )
11/0129.
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