リアラと二人、あの感動的というか思わず母性全開で抱きしめてしまったリアラは嬉しそうだからよかったんだけれども。すっかり後ろというか近くにあの野郎ども4人組(ユーリ、ガイ、スパーダ、ゼロス)がいたことを忘れて、思わず普通に喋ってしまっていたのが恥ずかしくてこの白くて透明な手をつかんで無理やりつれてきてしまった。
「 ふんふん、元の世界へ帰りたいと。ま、空間転送だけなら、ゴマ1粒くらいは出来るかも… 」
そんな先で出会ってしまったリアラが探していた、ハロルド博士。カイルとリアラが揃ったところで話し合いが始まったんだけれども。私の居場所がないというかナナリーを盾にしながら目をそらすエールに心をずたずたに引き裂かれているというべきなんだろうか。すいません、泣いていいですか
「 でも、あんた達デカ過ぎだわ。ムリね 」
「 そんな言い方ないだろ?この子達、困ってるじゃないのさ 」
そんな風にいう赤髪ツインテールのナナリーの後ろからやっぱり気まずそうにこっちを見るエール。私と目が合うとやっぱり目を下向けたり、カイルの頭の先を見つめている。
「 わたし達の頼みは、聞いてもらえないということですか? 」
「 馬鹿ねぇ。そんな面白そうな話、乗らないわけないでしょ? 」
誰にでもわかるように口角を上げた天才科学者、ハロルド・ベルセリオス。私はそんな彼女から軽く目をそらすと、近づいてくる音が聞こえた。コツ、コツと。
「 いい?あんた達二人をどこかに飛ばすってんなら、結構な量のエネルギーが必要なのよ 」
まだ止まない、足音
「 ま、時間転移も一緒にするんだったら、どれだけ時間を掛けても問題ないでしょ? 」
天才は私の前で立ち止まってじろりと私の顔を見た。私は目を合わせるだけで首をかしげたりはせずに、彼女が懐や何か実験道具を取り出したらバックステップからつなげるように回避する方法だけを出来る範囲だけで頭の中で考えているとハロルドが「ぐふふ」と笑みを浮かべた
「 それよりさ、今はココのギルドで研究してるラルヴァって奴のほうが面白そうなのよね。ぐふふ…、未知のマターの匂いがするわ 」
「 …、 」
「 おっじゃまっしま〜すv 」
「 おい、ちょっ 」
今の笑みはなんだったんだ!
それに妙に緊張したのも無駄みたいで少し嫌な感じもする。けれど、あの天才のことだからまた何十通りかの選択肢を考えながら私を見ていたととるのが一番かもしれない、下手に深く考えれば悪い事しか浮かばなくなるから
「 ああ言うところさえなければねぇ。確かに天才科学者なんだろうけど… 」
「 じゃあ、あれがリアラの言ってたハロルドか? 」
「 そうだよ。あんたは? 」
「 浅葱と言う。このギルドでお世話になっているんだが、君は? 」
ナナリーの後ろでエールが瞬きをした
一体どうしたんだろう?さっきから妙に様子がおかしいというか、うん?
「 あたしは、ナナリー・フレッチ。あんたが、エールの言ってた浅葱だね? 」
「 多分、そうだと思うけれど。一体どうしたんだ? 」
「 それがねぇ。アンタに言いたい事があるのに上手くいえないってずっと悩んでて、それにあたし達も付き合ったってわけさ 」
「 え?ハロルドに用があったんじゃなかったのか? 」
「 ついでっていえばいいのか、まあ、後は任せたよ 」
え、なにこのデートフラグ的な…いやいや、ギャルゲでもあるまいし、そんなことはない。これは健全な妹と私と世界とかの物語だったはずだ。ナナリーが離れていってしまうとエールはワタワタしながら「あの、えっと、そのね」と紙袋を両手で押し出してきた。
その様子はどう考えても手土産にしか見えないんですが!
「 エール 」
「 …な、なあに、 」
「 もう痛いところはない?今日は怪我してない?転んだり無茶は? 」
「 してないよ!もう痛くないし、ケガも、転んだりもしてないよ!お姉ちゃんがいつも守ってくれるみたいに、なんにもなかった 」
「 …え? 」
「 お姉ちゃんはいつもわたしの話を聞いてくれて、いつでも守ってくれた。でも、ずっと頼ってられないと思って、一人でお仕事に行ったら 」
ぽた、と大粒の涙が甲板に落ちた
「 お姉ちゃんの言ってる事思い出して、寂しくなって、 」
「 うん 」
「 あの時エールは浅葱お姉ちゃんとお話しなかった!お姉ちゃんは沢山話しかけてくれたのに、 」
「 …ん 」
「 ごめんなさい、 」
ごめんなさい。もう一度泣きながら。
ぼろぼろと涙を落としながら私に謝るエールを抱きしめると、エールの手から紙袋が落ちた。大きな音を立てて、綺麗なグラデーションの白い布地が甲板に転がり落ちるとエールは泣きながらそれを拾って抱きしめながら
「 それとね、ジェイドがね、浅葱お姉ちゃんが服が破れちゃって困ってるって聞いたの 」
「 ! 」
「 だから、お姉ちゃんに似合うって思って買ってきたんだけど、着てくれる? 」
まるで聖職者のような形の、その白を主とした淡いグラデーションの色にゆっくりと微笑んだ。着ないわけがない。むしろ喜んで着たいぐらいだ。そんな気持ちをのせて私はゆっくりと微笑んでから、エールの頭を撫でる
君からの大切な贈り物( 誇らしいより微笑ましく )
( 微笑ましいより愛しく )
( 愛しいより、優しい君からのプレゼント )
11/0125.
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