何でこうもタイミングよく皆が集まっているんだろう。まあそこには用事のあった赤目陰険眼鏡腹黒野郎がいたのでまあ、まあ良いとしてだ。すずちゃんが意味もなく私の服を奪っていってしまうことなんてないだろう。あの子は賢い子だ。私に怒られることを前提にそんなお馬鹿なことをするような子ではない。
とすると、
「 おやおや、随分と着慣れているようですねえ 」
「 わざわざすずちゃんに手間をかけさせやがって、この腹黒 」
「 貴女もですけどね 」
「
物心ついたときから承知してる 」
そんな軽いジョークの飛ばしあいをしている暇はないんだ。早く私の服を返せ!
「 取引をしましょう 」
「 …取引? 」
「 あなたの秘密一つで、服の一部を返します 」
「 一部!?一部って何!?破るとか!?なんとも微妙な交換だ!フェアじゃないぞ 」
「 ちなみに取引に応じないと、服はどんどんなくなりますよ 」
「 どんなご趣味ですか! 」
羞恥プレイと叫ぶ訳にはいかずに、思わず面白みのないお見合いの台詞を吐き出してしまった。くそう、やっぱりこの陰険眼鏡のクリア難易度は高いな!ついさっきまでルビアと妙にシリアスな会話をしていたって言うのにどうしてだ!どうしてこうなった!
「 選択肢は一つ、だな 」
「 覚悟を決めましたか 」
「 チャット!このギルド脱退します! 」
「 ダメです! 」
「 …く、くそう。私の羞恥心と秘密どっちが知りたいんだ! 」
「 勿論秘密にきまってるじゃないですか 」
決まっているらしい。どうせ聞くなら知りたいじゃなくて、大事なのか聞けばよかった…。聞いてももしかしたら同じ事なのかもしれないけれど、これは一体どうしたものか
「 秘密1!ありません! 」
「 はい、破り捨てましょう 」
「 なんて邪悪な奴だ。そのうち私が失踪事件を起こしたらジェイドが原因だからな! 」
「 本気で起こしたら全力で見つけ出しますからね 」
「 怖い!権力者だけに怖い! 」
そしてお願いだからビリッとか不吉な音を立てないで下さいお願いします。というか確実にいまシャツ破ったろ。破っただろうが!お前!それを作るのに人がどれだけの時間を要するのか知らないからそうやって簡単に引き裂こうとか考えたんだな!
「 秘密2!エステルとユーリが並んでると妙に絵になるとか思ってました! 」
「 はい、破り捨てます 」
「 今、今私の素直な心を!踏みにじったな!く、くそう 」
「 素直すぎて気持ち悪いですね 」
「 この鬼畜腹黒陰険眼鏡! 」
「 よく噛まないで言えましたね 」
「 それって貶してるんだろう?わかっているさ! 」
だんだんこの眼鏡と戦うには精神が削られてきました。しかも着物だと派手な動きをすれば帯が取れそうで怖い。着慣れてないせいか妙な緊張感があって、足のほうが肌蹴そうになるだけで少し恐怖だ。
「 ひ、秘密3! 」
「 燃やした方が良いですか 」
「 ちょっ、やめて、本当に…!戦いに支障が出る!着物じゃ戦えない! 」
しかも生足のチラリズムだ何て見えた人がかわいそうで仕方が無いだろうが!考えるだけでなんだか疲れてきたな。
「 浅葱 」
「 …なんだ 」
「 私がなにも気付いてないと思ったら間違いですよ 」
「 …さ、最近、その、 」
「 言ってください 」
言うのには勇気が必要です。
だからほんの少しだけ、待ってくれるか
「 貴女でないと、意味がないんですから 」
「 うん、あの、 」
少しだけ、視線を落として戸惑う私にジェイドが困ったように息を吐く。私が怯えたように肩を揺らすと近くにいた、というか集まっていた皆がざわめいて、息が詰まる。なんて、言えばうまく伝わるんだろう、か
「 …ジェイドの闇討ち計画を少々考えておりま 」
「
墜牙爆炎槍ッ!! 」
「 斜め突きで爆発だと!!待て、待つんだジェイド!唯一の火の技でなにしてくれんだ!消し炭どころかチリも残されてないじゃない!! 」
「
墜牙爆炎槍ッ!! 」
「 まさかの二着目襲撃!?容赦ないどころの問題じゃ、く、くそ、買ってくるしかないのか!! 」
「 はっはっはー 」
消された私用の服たちにお別れを( 浅葱ちゃん…なんで突っ込みの難易度上がってるんだろうなあ )
( さっさと喋っちまえば良いのに )
( まあ、そうできない理由もあるんだろうが、なによりも )
( 楽しそうだよなァ、アイツ等 )
( 安心しろ、ちっとも楽しくない!服返せ! )
11/0124.
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