「 エール、そこの棒とってくれ 」

「 はい、お姉ちゃん! 」



助手代わりと言っても組み立てぐらいしか出来ないので、ラルヴァ製造機。いや、ラルヴァ発生機の準備をしているのだけれどなんとも言えないというか、棒って言ってどうしてそのへんに敷いてあったレールを強引に折って持ってくるのかなあ!?クラトスもリフィルも止めようよ!この子ちょっとさっきから無茶苦茶だよ!?機材の意味わかってないんでしょうね、わかってるよ!私が後で教える事も!



「 リフィル、すぐに終わるからそっちの準備を頼む 」

「 ええ、わかったわ 」

「 次は、機材の中から板を取り出してくれるよね? 」

「 きざい?あ、ああ!わかった!あれだ! 」



何かを思い出したようによろよろとエールが歩き出す。さっき折ったレールの上を歩いて先にあったトロッコの端をつかんで、バキィと小気味の良い音を立てて持ってきた元トロッコの一部。今は見事な切れ端になって…



「 はい、浅葱お姉ちゃん 」

「 可愛く言っても今回ばっかりはダメ!正直その発想はなかったよ!舐めてかかってたよ!?でも、まさかのトロッコからなんて…! 」

「 どうしたの? 」

「 機材、持ってきたでしょ? 」

「 うん 」

「 その袋の中から取り出して欲しいの 」



そういうとエールはトロッコの切れ端を私から取って、袋の中に戻した。一回袋を締めて3秒ほどおいてから取り出して、私に「はい」と笑顔で渡してきたんだけれども



「 はい、正解はこっちでしたー! 」



すいません、私が耐えられませんでした。

そして私が設置したラルヴァ発生機を見ながら何度か説明文を口に出すリフィル。その確認事項の山にエールがふんふん、と頷きながらラルヴァ発生機をじいっと見ていた



「 機材の設置、完了ね。始めるわよ… 」



スイッチを押そうとした指がかすかに震えているのを横目に岩肌に寄り添うように身を任せる。そして発生機に触れてゆっくりと離れるリフィルの視線はずっと変わらないのにラルヴァが発生される様子もなく、一瞬でも光る様子がない。



「 おかしいわね 」



そう、リフィルが呟いた。しかめっ面のまま



「 その資料はどう書いてるんだ? 」

「 資料の通りだと、この装置を稼動させるとだいたい一分間でラルヴァが生成されるはずなのに、何も反応がないわ 」



クレスたちが書いた資料と少し違う、サイズが小さな資料を見せられたけれど全く読めないので適当に頷くとリフィルも相当考え込んでいるのか気付かない。いや、気付いて欲しくはないのでいいんだけど、字の形がとっても綺麗です先生



「 ここいらの地下に伸びた世界樹の根をカットすればマナも少なくなるのでは? 」

「 ええ〜?そんな事しちゃっていいんですか? 」

「 ドント・ウォーリー、ビー・ハッピー。これからの時代、マナよりもラルヴァのほうがはるかに一般ピープルの役に立つ 」




あれ?この声は…



「 今の話…、声の主はまさか… 」



緊張したリフィルの声を聞いて私はすぐに機材のスイッチを切り、解体する。落ちたネジなどを適当に袋にまとめて、機材をすぐに袋の中に入れるとクラトスが荷物をすぐに持ってくれた。まるで、買い物に付き合わされるお父さんみたいだ



「 いくわよ、エール、浅葱 」

「 ん 」



短い返事を残して、私は荷物を背負う。
リフィルの目は少し厳しそうにゆがめられて、この場所の出口を見た。ジャニスがそこにいる。そう思いながら



( 次はあれだ、その次は、 )
( そう考えるうちに、自分の必要性について何度も思う )
( いつまで、私はこのストーリーについていくんだろう、って )
( 本当は、此処にいてはいけないのに )

11/0123.




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