やっと身体の痛みもしなくなってきてやっとこさ安心、というところで仕事帰りにお礼と言われてキラーフル装備を頂いてしまった。多分着ないだろうしな、売ってしまおうか。そう思っていた矢先、子供達の水鉄砲によりこれを装備するはめになったのだけれど。二の腕はでるし、おなか辺りも出るわでこれって激しすぎる格好だと思う。気分は歩く18禁だ



「 はあ、ショックだ… 」

「 何がだ? 」

「 キラージャケットの露出が、あ? 」



このギルドに若草色の髪をした坊やがいたっけ?そうぼんやりと思いながらこの若草小僧をじっとみると若草小僧は私の足先から上へ舐めるように品定めの視線を送ってくる。目を細めたところが妙に似合うというか目つきが鋭くなると、少し大人の顔つきになると言うか、鼻の下が伸びているという、か?



「 人様をそういう妄想チックな目で見るのは楽しい? 」

「 おう 」

「 此処に病院を建てるか病院を呼ぶか悩みたくなるような爽快な返事だなあ、おい 」



歩く変態。
君はそのうち私にそう呼ばれるようになるんだろう。



「 鼻血でてるぞ? 」

「 あん?止めるもんなんか、もってるか? 」

「 今すぐ身体ごとひねって止血しないと! 」

「 殺す気か!! 」



どうやら、彼は骨ごと折ってしまうという事に気付いてしまったらしい。ちなみに彼の鼻からは何色の液体も垂れていないどころか、ちょっとしたお茶目と言うべきかおふざけのつもりだけれど彼は気付いていないし、チェスターには少しおとるが突っ込み速度は良い感じだ。これでテンポよく会話できたら完璧だろうな。



「 そういえば殺すと言えば、よく柔らかい表現されてると思わないか? 」

「 止血と全然関係ねェ事いってやがる!まあ、確かにそうだけどよ 」

「 ピーとか×××とか 」

「 さらに全然違ェ表現じゃねーか! 」



これを囁くようなポーズのまま言ってこの音が流れたら確実にそういう事を言っているという事になります。じゃなかった。思ったよりも彼の突っ込み磨きに一生懸命になってて忘れてたけれど、おなかがスースーする。二の腕とか、脂肪の塊なのに、こんなもんさらけ出してたら騎士団につかまってしまいそうだ



「 で、誰なんだ? 」

「 オレはスパーダだ 」

「 私は浅葱。気が向いたら、よろしく 」



そう営業用の笑顔を浮かべるとスパーダが不満そうな表情で私を見てくる。どこか口を尖らせるような少し子供っぽい表情だった。なんか可愛いな



「 ああ、そうかよ 」

「 何か文句でも? 」

「 いや、どうせならオレの事をスパーダ様って 」

「 どうしたの?何処かで頭でも強打させられたの?随分とネジがないみたいだけど。可哀想に 」



さらりと口がすべってしまったけれど。今、このホールには、スパーダと私しか居ない。それにある程度の言葉はチェスターのときで大分言ってしまっているから別にホールでの生活には困らないとしても警戒すべき聞かれたくない相手だっている。強いてあげるとして危険なのはパニール、ミント、カノンノ、エールなだけであって、それ以外は全てもうどうでもいいんです。今は本当に



「 ところで、 」

「 うん? 」

「 なんで、その馬かぶってんだ? 」

「 え?兎の方が好み?あるけど 」

「 あるのかよ! 」

「 マスク職人の人にもらえるんだ。結構便利でね 」



主に油物の調理の跳ねを防ぎ、私が調理している姿を隠すのに使われます。一回や二回かるく女性陣に小さな悲鳴を上げさせる最強兵器。馬マスク、兎マスクと私によって名称され、戦闘以外での使用率がやたら高いと噂されているらしい。



「 そうじゃねーよ 」

「 え? 」

「 被る意味がわかんねェ。それとれよ 」

「 あ、うーん、ちょっと、うん、まあ、 」



困る、かな。と小さく呟くように言うとスパーダの口元が大きく釣りあがり、ガキ大将みたいな悪い笑みを浮かべて私のマスクに手を伸ばす。ひっぱられる感覚に髪の毛がゆれ、無理やり感に皮膚が少し痛む。アイツ、見かけどおり鬼畜な不良さんだ



「 で、とった感想は? 」



開放感のある肌が心地よくて、馬マスクのしたのポニーテイルというくだらない事をしていた私の髪がサラサラと揺れる。スパーダの目はしっかりと私を映していて、彼がしっかりとつかんでいたはずの馬マスクが、落ちた



「 …くだらねえこと、しやがって 」

「 うん。それで?マスクとったらがっかりした?だったらざまあみろって話なんだけれど 」

「 …ちっ 」




( 悪いものの後だから綺麗に見えるんだぞ?と言ってみた )
( ゲテモノ料理のあとのマーボーカレーみたいな )
( そんなトリックに引っかかった若草の少年が視線をそらす )

11/0120.




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