「 随分と顔色がよろしくないようですが 」
「 …ジェ、イド、か 」
まだ痛む身体に、声が上手く出なくて途切れ途切れになる。不安げに顔をしかめた21歳メンバーが視界にうつり、私はこの場にいないエールを今だけ嬉しく思う。こんな情けない姿をあの子が見たら心配して、慌てて、いっぱいいっぱいになってしまうのは簡単に想像できるから
「 大怪我をした訳では無さそうだな 」
「 ん、 」
頷くのも首や反動で頭が痛いから出来なくて声を絞り出す。放った直後よりマシになったけれど痛いのには変わりないし、煮えたぎるような血液が走るような感覚の所為か身体の体温もわからない。そんな私の体を支えようとクラトスの手が私の肩に、
「 いっーーー!!!! 」
触れた
それだけなのに、電撃が走るみたいに痛い
「 浅葱、少し失礼しますよ 」
びりびりと後が残る痛みの中で、コートの袖がゆっくり押し上げられる。真っ赤に充血した血管が浮かび上がっていて、腕も皮が裂けそうなぐらい腫れあがった腕。流石のジェイドもクラトスもため息をつくどころか顔をしかめて私を見る。ひりひりしている肌だけが乾燥肌みたいで気になって、掻きたくなる指に力を入れると「っ!」と声に出た
「 何をしたんですか 」
「 え、と 」
「 浅葱、早く言いなさい 」
お父さんが急かして、お母さんが聞いてくる。私はなんだかいたたまれないというか完全に親みたいになりつつあるこの二人から目をそらすとジェイドが、いつしか私の肩を握ったあの手の形をとって、
「 上級、術の、詠唱、を、無理、やり、早く、出した、から 」
「 こうなったと。では、通常の術ではこんなふうにならなかったんですね? 」
あれ?なんで今喋ってるんだろう?まさか、あの手の形に恐怖を抱いてしまったんだろうか。肩潰し恐怖症。物凄くかっこ悪いどころか凄い嫌がらせを受けている気がする。妖怪肩つぶしとかいたら確実に泣いてしまうくらいだ
「 … 」
「 浅葱、本当に今回だけなのか 」
「 違う、けど 」
「 『けど』じゃ、ありません 」
ぴしゃりと言い放ったジェイドに私が視線を落とす。
「 私は前にも言ったはずです。覚えていますね? 」
「 うん、 」
「 だったら、今後術の使用を禁止します 」
「 ちょ、それ、は 」
無理だよ。私が術を使えなくなったらどうしろっていうんだ。ちょっとしたサポートにも使えなくなって完全に戦闘でも役に立たなくなるだろうし、前衛に専念しろって言われたとしても元が中途半端な戦い方をしていたんだから今更できる訳がないのに!
「 いいですね? 」
「 ……… 」
「 いいですね? 」
「 …いや、だ 」
「
いいですね? 」
「 ……… 」
その声に頷く事は出来なくて。親に叱られる子供みたいに下唇を噛む。じっと耐えるように俯くと首に電気が走ったみたいにビリビリとするけれど、さっきほどじゃない痛みにほっとした。多分…今、顔を上げて反論してもジェイドもクラトスも私の意見に賛成してくれないだろうな
それが彼らの心配の仕方( 子供みたいって馬鹿にされても良い )
( 涙をこらえて自室に歩き出す )
( そのたび胸と身体が、痛んだ )
11/0119.
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