サァーっと上から降ってきて、下に落ちるときはぴちゃ、びちゃ、と音を立ててお湯が落ちていく。あの野郎、そうとう強めに首を後ろに手刀打ちやがったな。微妙に頭痛いじゃないか。良く眠れた、って所に関しては確かに感謝したいけれど。そう思いながらシャワーの蛇口を逆に捻って止めると、きゅ。という音が反響した



「 早く着替えないとな 」



もう8時だ。いつもならご飯を食べ終わって洗濯物を干している時間なのに。昨日ジェイドと仕事に行ったのが朝だったから、24時間くらいは軽く眠ってしまっている。早く仕事に戻らないとパニールに負担をかけてしまうかもしれない。ぼうっとバスタオルを身体に巻きつけて、バスルームからでると



「 え、ちょ、おまッ、浅葱!? 」

「 …チェスター?なんだよ、こんな朝早く 」

「 お、お前、服、 」

「 これから着るんだよ、初代スケベ大魔王 」

「 スケベ言うな!!つか、初代って?! 」



初代スケベ大魔王の癖して顔を赤くしながら私を凝視している。隠れるところは隠れているし、今更少年に見られたところで恥ずかしいけれど大人の余裕としてですね!耐えてるよ!ものすごく耐えてるんだからね!?ここにゼロスとか居なくてよかった!本当に!ガイもいなくてよかった!居たら新しいトラウマになっただろうね!



「 あのなあ、人がシャワー浴びてる間に部屋に入って謝罪もないのか?むしろ、早く部屋から出て行け。服が着られないだろうが 」

「 へ?そのタオルの下は、 」

「 出て行かないと悲鳴をあげるぞ?3、2、いー 」

「 おじゃましましたああああああああああああああああああ!! 」



扉が閉まるのを確認して、バスタオルを外して服を着ようとクローゼットをあけるといつものローブと服が入っていた。生乾きの髪をそのままにして一度服を着て、ドライヤーを手に取るとシャンプーの香りが鼻先を掠める。ああ、手刀が嘘だったかのようだ



「 わ、悪ぃ。そ、その入っていいか? 」

「 そこまで挙動不審にならなくても駄目とは言わないよ。もう服も着たから安心してくれ 」

「 そうか… 」



私のベットに腰掛けたチェスターを見ながらシャツのボタンを閉じる



「 それで? 」

「 ああ。折り入ってお前に頼みがあるんだけどよ 」

「 ん。何?流石にマニアックな頼みとかだと答えきれないかなあ。可愛い少女拉致してこいとか、裸エプロンで起こしに来てくれとか 」

「 誰がそんなこと頼むか!! 」



アミィちゃん大好き男だからてっきりそうかと思ったのに選択肢を間違えてしまったらしい。アミィちゃん大好きだからきっと小さな女の子とか好きなんだろうな=ロリコンとか正直思ってたのに違う意味でやられちまったぜ。裸エプロンは男の夢だと思ってたのになあ



「 お前の所為で、何言おうとしてたか忘れちまったじゃねえかよ!! 」

「 なんだと!私の所為で自分の頭のお粗末さ加減に気付いてしまったというのか!? 」

「 オレの事を馬鹿だとおもってんな!? 」

「 何故わかったの!? 」

「 もういやだこいつ! 」



と、いう冗談はさておき。チェスターが本気で馬鹿にされているのとかもうかわいそうで見ていられないのでさっさと思い出してもらおう。もうシャツのボタンはかけ終わってるし。いつでも部屋からでられるように準備はできた。あとはチェスターの頼みとやらを聞くだけだ



「 チェスター 」



コートが羽ばたく音を立てながら私は袖に腕をいれ、腰にいつもの重さを通す。



「 生憎だが、私の貸せる物は少ない 」

「 は、 」

「 わずかな攻撃力、口頭、世間常識の薄い知識くらいしかないが、その頼みは叶えられそうか? 」

「 あ、ああ! 」




( 説明はホールでいいか? )
( ああ、構わないが )
( 妙にかっこいい返事しやがって! )

11/0116.




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