「 大変ですよ! 」



ケガ人、ケガ人…と呟いているパニールを横目で見るとその表情は青い。此処のところこういう事が多い気がする。何かあったんだろうか?冷蔵庫の電源が落ちてて生もの腐っちゃったとか、洗濯機の使いすぎで壊れたとか、オーブンがリフィルの所為で爆発したとか、考えれば考えるだけ…あれ?ケガ人って?



「 ケガ人を発見しました 」

「 私が見るわ 」



リフィルがさっそうと立ち上がり、ミントを探そうかと思ったけれど仕事に行ってしまったのか姿はない。



「 私も行くよ。多少は手伝える 」

「 赤い髪のお坊ちゃんです。医務室のベットに寝かせていますので、治療をお願いします 」



赤い髪?アッシュだったっけな。だったら普通の法術の効果はあるのか?怪我と言っても肉体からエネルギーをとられてるわけじゃなくて、蝕まれている訳なのだから、マナ事態を蝕んでいる。と捕らえていいのかな。
そう考えているとリフィルが少し考えたように口を開いた



「 あなたが抱えて船室へ? 」

「 あっ、はい。買出しで安売りの時なんかの為に私、抱える力だけは… 」



パニールが恥ずかしそうに両頬を押さえて言うとリフィルがその腕を凝視している。



「 あら、やだ。そんなことより氷嚢の用意してきますね 」

「 リフィル。私達も医務室に行こう 」

「 そうね 」



パタパタと羽ばたかせながら急ぐパニールを横目に私が軽くリフィルの背を押すと頷いた。医務室までが妙に遠く感じていつもたいしたケガじゃなくて絆創膏を取りに行くのが普通になっていたのに。慣れない道みたいに見えて少し歪んで見える



「 ナツナッツ族は、 」

「 うん? 」

「 そんなに力があるのかしら。それに、パニールは自分のことをおばさんだといっていたし、なにより、パニールのことも不安だわ 」

「 え? 」

「 ナツナッツ族というのは、そんなに寿命が長いわけではないの。私達の何分の一と言えばいいのか、はっきりとはわかってないのだけど 」



確か、4歳で成人で。直接ではないけれどゲーム内で18だと言っていた。
よく考えなくてもそれって相当な年なんじゃないか?人間の成人が20がナツナッツ族では4。つまり、パニールはもう90歳って事に、



「 浅葱? 」

「 考えていても、しょうがないよ 」

「 しょうがない、って 」

「 寿命の事で私達にできることは、ないんだ 」



それは、人間もハーフエルフも、ナツナッツ族も皆、みんな一緒の事だから。



「 何か出来るなら、皆必死になるのもリフィルはわかってるんだろ? 」

「 …そう、ね 」

「 みんなは優しすぎるから。だから、パニールもあまりそういう話をしないんだろうな 」

「 パニール、も? 」

「 ああ、ごめん。間違えたパニール『は』だったか 」



その『も』には、私もリフィルとジーニアスのことも含まれているんだよ。二人がハーフエルフだって隠してることも知ってる。あの髪型には耳を隠すための長さだから。
それ以上に私は、



( 隠したままなんだ )
( 言わないで、そっとしまって )
( 一人で自分に爪を立てる )

11/0116.




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