タオルの端をもって、パンッと音を鳴らすと皺が伸びて気持ちもよくなる。皺を伸ばさないとしわしわになっちゃって困るこの大事な行動。さらに干す時に青い海をバックに干してまるで絵に描いたようにはためくタオルやシーツが現実的なようで、結構綺麗な光景だから私はとても好きだ



「 浅葱お姉ちゃん 」



タオルを持ちながら後ろを振り返ると、えへへ、と笑みを浮かべて私を見ているエールがいた。恥ずかしそうに少しもじもじしながら私とタオルを交互に見るものだから、あまりの可愛さにずきゅんとしたというか、思わずだらしなく笑ってしまう。ああ、可愛いって犯罪だよね…!



「 おはよう、エール。どうかしたの? 」

「 お、おはようございます、え、えと、あ、あの、あのね 」

「 うん? 」



言いにくそうに、私の手元を凝視して顔は少し俯いたまま目線だけ私の方を向く。これって、これって、噂の上目遣いってやつですか!ああ、畜生、これは無意識なんだよな!?ず、ずるいというか、けしからんもっとやれ!というべきなのだろうか!なんだか、胸が痛い!



「 お洗濯物の、干しかたを教えてほしいの 」



青空の下。
ディセンダーの上目遣いで舞い上がっていた女が、停止しました

と、いうかそれは私だった



「 おねがいします 」

「 …え、ええと、洗濯物の、干しかた? 」

「 うん。ギルドのお仕事ばっかりでいっつも、お姉ちゃんにお料理とかお洗濯とかお掃除とか、まかせっきりで、 」



それは私が最近家事ばかりしていて外仕事を怠っているとかそういう指摘ではなくて、大変そうだから、という事だったらエールだって毎日尋常じゃないくらいの仕事をこなして、キノコをとってくる任務でキノコを握りつぶしていた気がする。もう一度取りにいくのはもう仕様だな。あれは



「 それに、ルビアがね 」

「 ルビア? 」

「 『女の子だったら洗濯物ぐらい干せなきゃだめなのよ!』って言ってたから 」

「 なるほど、ね 」



確かにあの神官見習いなら言うかもしれない。私もこの間『ズボンばかり穿いてないでたまにはスカートを着たら、可愛いと思うわ!』と言われてズボンの機能性について語りつくすつもりで反撃を開始したら、ミニスカートを出されて思わず逃走したんだけれども



「 じゃあ、タオルをもって 」

「 はい! 」

「 軽く広げて、タオルの端を持って空気中ではたきます 」



パンッて音が空気中に響いて、エールが目をぱちぱちしながら見よう見まねといったようにパンッとはたく。



「 こうやって皺を伸ばしてから洗濯バサミで留めるんだよ。じゃないとシワシワで着心地がよくないからね 」

「 う、うん? 」

「 着てもらう時に、着易いほうがいいでしょう? 」

「 うん 」

「 シワがあると袖の長さが足りなかったり、見た目が悪くなっちゃうのもあるけれど、生乾きになっちゃったりするの 」

「 …あのくさいやつ? 」

「 そう 」



あの生乾きの臭いは流石にエールも受け付けないらしい。私も得意ではないから、ドライヤーで無理やり乾かしたり、ファブってからやっぱり無理やり乾かしたりした記憶がある。



「 皆が気持ちよく使えるようにって思いながらはたけばふかふかになってくれるんだよ 」

「 本当!? 」

「 うん。本当 」

「 それって浅葱お姉ちゃんの事、考えながらでもいい? 」



タオルを持ちながらエールが私にはみかみながら聞くものだから



「 うん 」



なんだか恥ずかしくて、それ以上言葉が出なかった。



( 映えて、宝物みたいにキラキラして見える )
( 宝石とは全然違う )
( 大切な、煌き )

11/0116.




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