緑色の科学部屋の丸イスに座って、赤い目を見ると私から見れば物凄く落ち着いたような表情で私を見ていた。別に見られたって構わない。見られていることに不満はない。人と話すときのマナーだと知っているから。だた、貼り付けた笑みだけが彼の習慣だとしても不自然で、不思議と直視を続けるのが少し辛い気がする
「 『発表会』はどうでしたか? 」
「 どうって聞かれてもな…ミニチュアサイズのタワーが三つ。タワーの先端にボールみたいな球体があった。それだけで山を始めからなかったかのように消してしまったよ 」
思い出すだけで胃が圧迫されてゾワゾワと鳥肌が立っていくのがわかった。寒くないのに震えそうになる肩や唇を噛むと、また鼻をつくような苦い味がして、ゆっくり力を抜く
「 消した、ですか 」
「 …私の言い方が悪かった。山が粉塵になったというべきか、形は確かに土にかえってしまったかもしれないな。威力は申し分ないくらいだ。酷い言葉を吐けば、国なんて簡単にぶっ飛ぶぞ 」
もう二度と見たくはない。次、なんて見てしまったら、
「 エネルギー放出までの時間はわからないが、兵器になってしまったら確実に 」
確実、に。今、なんて続きを言おうとしたんだ?気分が悪いのにどうしてこんなにも口は動くんだろう?どうしてこんなにも器用にもサラサラ言葉が出てきて、それで、私はなんて言葉を口にしようとしたんだ?口いっぱいに広がった鉄の味が以上に気持ち悪くてまた下唇を強く噛む
「 浅葱 」
「 な、に? 」
「 いつもの貴女らしくありませんね 」
そう呟くように私に言ったジェイドの言葉にふと、顔を上げるとその顔に違和感がなくて、ゆっくりと呼吸をするといつのまにか自分の腕をつかんでいた自身の手の力が弱まる。
「 ごめんなさい、遅れたわ 」
だらん、と落ちていく腕を見ることはなくて。入ってきたリフィルを見るとリフィルの顔色もあまりよくはなかった。彼女は知らなくてあの表情なのに、どうしてあの事を知っていた私はあれ以上なんだろう?知っていたからなのか、もしかしたら負の影響を少なからずとも受けたとしたら、
「 …なるほど。貴重なデータをありがとうございました 」
ぐるぐる走っていく考えの中で聞こえた声を横目で見ると、少し考え込んだようなリフィルの表情と顔をしかめているジェイドが見えた
「 もし、これが軍事に使われたら… 」
「 当然、軍事転用の研究を始めているでしょうね 」
先のことを考え始める二人を見て、現時点で立ち止まっているような私が置いていかれているような気がして、心が物悲しそうに空気が通り抜けるのを耐えている。落ち着かない心から、何かが流れ出すような不安感に私は立ち上がった
「 先に失礼するぞ 」
そういい残して科学室を飛び出してホールに戻るけれどあのコートを持ったエールはいない。ルビアに聞いても途中からいなくなったの。という。甲板へ行ってもカノンノは首を横に振って、食堂にいってもパニールは首を横に降る。エールの部屋も空っぽで、ふと自分の部屋の扉を見て立ち止まった
まさか。そういう言葉が頭によぎって、扉に手をかける
音を立てないように開いていく扉から見えたのは、
「 …おねえ、ちゃん 」
私のコートを抱きしめながら、
私のベットの上で猫みたいに丸まって幸せそうに眠る
小さな幸せの、塊( その顔は、いい夢をみているようで笑っていた )
( 目が覚めないように頭を撫でて布団をかけて )
( コート代わりの白衣を着て、起こさないようにと部屋を出る )
11/0113.
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