「 浅葱は、どうするんです? 」



声と同時に強く踏み出した右足。強すぎて靴の中で少しぶつけた親指が痛いけれど、そのままゆっくりと踏み出した。ゆっくりでいて強く、まるで子供の足取りのように踏み出した足。じわじわとさかのぼってくる痛みに、まだここにいると確信して立ち止まる。そして、体が軽いと見せかけたように振り替えると、桃色の髪がサラサラと揺れていた。



「 どうって、何を? 」

「 皆は、目的があってここに…この船に今いるみたいでしたから。浅葱は、 」

「 あー…、私はきっと、旅に出ちゃうんじゃないかな 」



エステルが知らない場所に。地に。世界に。
この世界の誰かが知らない世界に言ってしまうのかもしれないし、私が何も知らない場所に行ってしまうのかもしれない。いまいちわからないけれど、それはきっと私にとって旅になると思う。今みたいに強く、



「 旅、が目的ってことですね! 」

「 うん。きっと、終わりは無いと思うけれど、 」



強く、踏み出して。
色んなものを見るかもしれない



「 放浪になってしまうだろうが、それも楽しそうだな 」

「 …じゃあ、ここに帰っては、 」

「 それは、わからないよ 」



キラキラした目を曇らせて私を見つめるエステルに私が首をかしげると、そっと優しげでどこか品のある手つきで私の手を握る。乱暴でもただの優しさでもなんでもない、その手つきで。柔らかな布が私の指先を淡く包む



「 じゃあ、ユーリはどうなるんです? 」

「 ゆ、ゆーり? 」

「 浅葱がいなくなったら、ユーリは、 」

「 ちょ、ちょっと、え、エステル?話が飛びすぎて、 」

「 浅葱は、どう思ってるんですか!? 」



どう、って聞かれても。そう、考えてしまうとよくわからない。
気持ちは嬉しいけれど別に恋だなんだ、ああどうしよう!なんて感情はこれっぽっちも湧き上がらないし、どちらかといえばああ、今日もイケメンだったなあいつ…くらいしか、思い当たらない。これは私がおかしいのか?



「 まあ、素敵な人だとは思うけれど 」

「 けれど?けれど、なんです? 」

「 もし、私がいなくなってまたで会えるかって言うのは、やっぱり縁とかそういう問題だと思う、し 」

「 えん、 」



私の手を握ったまま、ぱちぱちと瞬きをして私を見つめるエステル。その緑色の目数回、濡らす瞼の動きを見ていたら、何か思いついたかのようにキラキラと輝いてきた。やばい、なんかあんまりいい予感がしない。このお姫様乙女チックというかドラマチックなこと好きなイメージしかないんだが、くそう、本のようなドラマなんてね!そうそうありはしな、



「 じゃあ、ユーリが浅葱のことを迎えに着たら、 」

「 …む、かえに? 」

「 浅葱に出会えたら、 」



いんだと思えたらそれはきっといいんだろうって思うのに。
私がいなくなったら、誰かがそれを迎えに着てくれたら。



「 それは、縁ってことですから、その時は 」



ちょっとだけ、胸がきゅうっとなる。まずい、私も女の子だったのか!いや、子ってつけるような人生送ってきたような記憶はあんまりにないけれど、あったらいいのに。って思ってしまう。まるで漫画のような、ドラマのような夢のお話なのに



「 …好きになっちゃうかもしれない、 」

「 ! 」

「 あああああ!もう、エステルってば!もう、そんなこと考えさせないで!今はそれどころじゃないんだから! 」

「 で、でも、これは… 」

「 も、もう、いいの! 」



誰が迎えにきても、きっと嬉しく思う。男性だったら、私だって恋心があるんだからきゅんってくるかもしれない。でも、迎えに来てくれるなら、手をつないだゲーデとエールだったら、



( 浅葱?どうしたんです?急に嬉しそうな顔して )
( いや、ちょっと可愛い子たちを思い出してさ )
( かわいいこ? )
( うん )

11/0604.




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