「 ガイって私に対して本当に怖がらないよな 」

「 それが何か不満なのかい? 」

「 まあ、つまらない 」



ガイが他の女性に対して叫ぶ姿や避けるように回避する姿を何度も目撃していると言うのに私には効果がない上、普通に肩を叩いたり、ハイタッチできたりとなんだか親密度が上がると言うか。女だと見られてないと思うと女としてどうなんだとか思うんだけど。と、ため息をついた私は頬杖をついたままガイを見た



「 つまらないって、ガイはおもちゃじゃねえぞ! 」

「 ルーク、私はただ疑問があるだけなのだよ 」

「 はあ? 」

「 ガイが遠まわしにお前なんて女性の欠片もねえよと言っている気がして納得いかないんだ 」

「 …え? 」

「 だって、女性恐怖症なんだろ 」



だったら、一応性別上女性である私にも震え上がり叫んでもいいはずだ。むしろ叫んでくれた方が私としては何となく嬉しいような気もする。女性として見られてないのだからコレは。



「 浅葱は十分女性らしいよ 」

「 どの口がそんな事を言うのかな、ガイくん 」

「 俺は少なくともそう思ってる 」

「 ………ルーク、もうやだこの人! 」

「 えええ!? 」

「 天然素材!対女性用加工品!天然たらし! 」



じりじりと距離をとって、ティアの手をとった私はガイを睨みつける。あの男はきっと一般的な意味でたらしとかプレイボーイとかいう言葉が似合うんだろうとは思うが誰に使おうがきっと勝手なのもわかっているし、私自身に使ったのもきっと無自覚なんだろう



「 もう天然じゃないわね… 」

「 ティアの冷静なツッコミには笑みで返すしかありません。だが、ガイ。私になんで反応しないかなあ?喧嘩売ってる? 」



静かに右こぶしを握り締めた私にルークが一瞬にして青ざめる。多分この間影追い、シャドーボクシングまがいをやっていたのを見ていたからそれが脳裏に浮かんだんだろうけれども別にルークにやる訳ではないので安心して欲しい。私の標的はガイ・セシルだ。あの金髪碧眼野郎に一発かましてやりたいだけなんだ。新しい恐怖心を植えつければ私にも叫んでくれるかと思って、ね



「 うわあああああああああ!ちょ、お前ガイに何しようとしてんだ! 」

「 離せルーク!訳はあとで説明する。だから今は、殴らせろ! 」

「 落ち着けって!ガイは悪くねえだろ! 」

「 いや、悪い、悪いね! 」



左ジャブからの黄金の右で華麗なるアッパーを決めてやれば流石の私にも恐怖症が働くだろう。まあ、ガイの恐怖症の理由は違うけれども、とりあいずルークを振り払う事が先決だ。



「 殴ったところでどうにもならねぇだろ!? 」

「 ルーク、人はチャレンジャーだ。新たな恐怖心を植えつける事で世界が救われるかもしれない…! 」

「 ガイの世界が今以上に小さくなったらどうすんだよ! 」

「 …。ガ、ガイ…ルークに言われてるよ、 」

「 別に気にしてないさ。俺だって治せるもんなら治したいけど、それが通じない相手がいるって事はもしかしたら心のどこかで失礼なことを思ってるのかもな 」

「 ご、ごめんな…そんな事も考えもせず、左ジャブからの右アッパーを決めようとしてた 」



ルークを振り払い。ガイの近くに行ってみるが本当に震えもせず温かな目で私を見てくる。とりあいず、外人はスキンシップが激しいとか聞いた事があるので抱きついてみようと思う。でも、抱きついた事ってないから、やり方わからないんだけど、うん…



「 ガイ、腰細い 」

「 浅葱…? 」

「 ほら、これが君の恐怖の対象の女性ってヤツだ 」



戸惑うように抱きしめられる感覚に何とか息をする私。



「 ガイの恐怖症の理由とかなにもわからないけど、まあ…自分のペースで自分の相手を探して必死に直すのもいいんじゃないかと思います。お姉さんは 」

「 そう、だな 」

「 しょうがないよね。綺麗なお姉さんとか可愛いお嬢さんとか、グラマーなお姉さまとかに触れられないのは。今は私で我慢しておけばいいさ 」



ガイの背中をポンポンと叩くと部屋の中で「え?」という事が響いた。なんか変な事言っただろうか。普通にかわいそうだな、と思ったことを言ったつもりだったのにどうしてこうなったんだろう。部屋の空気が固まったと言うか、うん?



「 …浅葱 」

「 何だ 」

「 傷が残るようだったら、責任は取るから 」

「 何度も言うようだけど大丈夫。本気でお嫁さんになりたいとか思わない人だから。人間って結構一人でも生きていけるし、旦那が欲しいとは思わない 」



ばっさりと切った言葉と同時に私はガイと距離を置いた。彼に責任をとってほしいとは思わないし、背中の傷だって大分薄れているから多分皆の回復術の賜物だろう。それに、

今だって一人で生きているようなものだから。なんていわないけど



( 女性として見られたいからじゃない )
( たった一人、反応してもらえなかった事が )
( 異端だって言われてる気がしたの )

10/0827.




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