「 さて、ここもだな 」
さっきのエリアに似た場所に大きなパネルを敷き詰めたような装置がそびえ、その手前には不気味にオレンジ色を発するハロッチュGOGO号。そのネズミを軽くスルーしながらパネルの前に立ち、どこか嬉しそうに手を伸ばしたガイ。ハロッチュを捕まえるカノンノとエール。そして、ガイの隣でパネルに手を伸ばす私は仕事ないんじゃね、これ。なんて思いながら、横目にガイを見てみれば
「 機械というより、生物のようだ…。脈打つような、息をするような光 」
完全に世界に入っていっていました!
どうしようこれ!私、ここで突っ立ってても邪魔だろうし、でもここで手を出してしまったら彼の仕事を奪うというか楽しみを奪ってしまうのはあまりにも酷というものだろうし。でも、でも、退屈ほど苦手なものは…は!そうか、ここで思い切って素敵な想像を、
「 不思議だな。無機物のはずなのに、まるで眠っている人に触れているような感じがする 」
「 ニアタは生きているからだよ 」
丁寧な手つきで、パネルを押すガイの横で呟いた私の声。
頭の中に残る、発した音だけがもう一度、もう一度、と何度も繰り返される
「 生きているってどういう… 」
「 そのままの意味、って言った方がいいんだろうけど…ねえ、カノンノ 」
「 うん。…ニアタは、生きてるよ 」
「 いや、でも、じゃあニアタってのは、 」
「 あってみてからのお楽しみ、と言ったほうがいいかもしれないねえ 」
「 そうだね。見て見ないとなんとも言えないだろうし… 」
もう既に会っていることも、見ていることもきっとまだしらないのだから。お楽しみはとっておかないとつまらない事になってしまうだろう。だけど、ニアタは確かに生きている。肉体じゃなくて、精神が心が生きて今まで過ごしてきた。本人に生きていると告げてしまえば論理的に包まれてしまうんだろうけれど
「 リフィルが言うには、賢人なんだろ?そうだとしたら大分歳をとってるんだろうが… 」
「 聖人の次に偉い位ともいえる位置を賢人というけれど、賢人と聖人の違いは大きいからねえ。そういう意味ではリフィルの言い方、というか例え方は本当にすごいと思う 」
「 違いって? 」
タンッとパネルに触れた音を一度鳴らしてから振り返る。
「 夢を持つか持たないかの差 」
「 ゆ、め? 」
「 私はさ、賢人って夢を持ち、知恵を持ち、柔軟性のある人の事だと思ってるから。聖人と比べちゃうと、聖人が本当に偉いのかってきになっちゃうんだよね 」
「 気になるって…それじゃあ、まるで賢人のほうが位が偉いって言ってるようなものじゃないか 」
「 些細でも夢の無い生き方なんて、味気が無いと思わない? 」
料理だって、なんだってスパイスはあったら楽しいし、素敵なことだと思う。だから夢を見ない聖人よりも夢を持ち、知恵をしぼり、賢くある賢人の方が実は偉いんじゃないかって今でも私は思っているんだけれども。心底、嫌な子供だなあと今さらながら反省するよ…
「 で、ネズミさんはあと何匹だっけ? 」
「 発進していったネズミロボットは三つ。ここで二つ目だから、あと、一箇所ね 」
「 そうか。じゃあ、次に行く準備しちゃってくださいな 」
「 え? 」
「 もう終わる 」
まるでEnterキーを押すみたいに、少しだけ強く触れたそのパネル。思い切って、この場の賢人に今の気持ちを押し付けるみたいに。ほんの少しだけ強く押してしまったその色は、金色に輝く
「 よし、ここは終了だ 」
「 カノンノが教えてくれた通りに行けばあと一匹探せばいいんだけれど、 」
「 エール、早く探そう! 」
「 うん!いく! 」
「 あ、ちょっと、二人ともそんな風に急いで怪我したらどうす、 」
追いかけようとして解けそうになった手を、
「 急ぎましょうか、お嬢様 」
強い力が掠め取る。数歩先を歩くように、私の手を引いて足早に歩くガイの背中。今までにされた事のない扱いに戸惑うように足を止めそうになるけれど、ちょっとだけ嬉しくて。スキップするように少しだけ跳ねると、君の笑った声が聞こえた
乙女心をくすぐられるようで( あ、 )
( うん?どうかしたのかい )
( ガイがあまりにも女の子扱いするから鳥肌たってきた )
( …嘘だろ? )
( いや、多分、マジッス )
11/0524.
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