散々恥ずかしい思いをさせられてしまい、まともにカノンノやエールの目を見れずに歩いてきた先。暗闇の中にさらに黒い何かがあるのが見えた。斜めになったテーブルのような、台形ともいいにくい形に見える何かを見つめながら進んでいくとガイの手に力がこもって前に進めなくなる。ゆっくりと視線をあげると彼はその『黒い何か』を見つめていて、私はその何かに目線をもどすとその下のほうでオレンジ色のひかり、が



「 …あ、ああ、あ、 」

「 これは一体…? 」



妙に冷静ですね!ガイさん!
いや、ちょっとまとうよ。あのオレンジの光はなんなの?あれ、ハロッチュってそんなやつだっけ?いや、待って待って。もしかして、もしかしてだよ。この建物って長い間ここにあって色んな世界で過ごしてきた訳だから、もし、もしの話だけれども幽霊、とか



「 修理マニュアルには、肉体で言うところの、ポンプ機能に該当すると書いてあるな… 」

「 え、ちょ、ガイ、やだ、ひっぱらないで、そのオレンジに近づきたくは…! 」

「 ここを直せばニアタ・モナドの隅々にエネルギーが行き渡るはずだ、とな 」



ちょ、すいません誰か彼を止めてくれませんか!なんかスイッチ入っちゃってるみたいなんですけれども!?いやいや、もういくら好きでもさ!いくら音機関が好きだからって人を巻き込んだ趣味って言うか好みって言うのは、表現しにくい気持ちがあるから!そう視線を彼に向けると、



「 とにかく、マニュアル通りにやってみるか 」



嬉しそうに笑っていた。それと同時に緩んだ指。
だらん、と落ちていく私の手。どこか楽しげに大きな黒いようなパネルを見つめたガイが伸ばすその大きな手



「 浅葱、手伝ってくれるかい? 」

「 うん 」

「 じゃあ、ハロルドのマニュアルどおりに頼む 」

「 了解 」



わずかに残るグローブごしの暖かさを握り締めながら、私はパネルに手を伸ばす。長方形だったり、微妙に形が違うものも多くてパズル遊びをしているような感覚に口元が緩んでしまう。機械は確かに楽しいけれど、壊しそうで積極的には触れなかったからなあ



「 よし、これでいい 」



満足気に笑うガイの前にはいろんな色や場所を移したディスプレイのようなものが宙に浮かんでいる。文字も、なにもかもが映るこの場所。ディスプレイの光でぼんやりと照らされる私達は、



「 回路の触媒が欠陥していたみたいだ。他も同じ症状かも知れない。急いで、残りを探そう 」



まるで生き返ったように金色に輝くパネルを見てから背中を向けた。ただ、エールだけが子供のように目を輝かせてそのパネルを見つめて本当に小さな声で



「 ニアタ、あとちょっとだからね 」



呟いていた。
優しい声で誰かに語りかけるように、そっと、甘く。また会えるのを待ち焦がれているそんな声色で君は、ニアタへと呟いた



「 …エール 」

「 あ!え、えっと、おねえちゃんどうしたの? 」

「 お姉ちゃんは復活いたしましたー! 」

「 ほ、本当?!お姉ちゃん復活したの?! 」

「 ふっふっふー!復活の呪文もバッチリです 」



手をはさみに似せた状態でエールにむけて突き出すと、慌てて拳を固めて突き出してくるエールは少し顔色が悪いけれどいつもどおりで。いつもどおり過ぎて、なんだか胸がくすぐったくて



「 次、いきましょうか! 」



心のどこかで



( あれ、おばけはもういいの? )
( 出たら、ガイを盾にする事にしたんだ )
( …まあ、構わないが… )
( まるでガイが浅葱の騎士様みたいだね! )
(( 騎士様、ねえ… ))
(( 騎士様、か… ))
( どちらかというと、我侭お嬢と執事だと思う )
( それはそれで、否定しにくいぞ )

11/0522.




- ナノ -