「 ディセンダー…、また会ったな。 」



久しぶりにあったかのように挨拶をしたゲーデにエールがニコリと笑おうとした。それなのに彼はおかしな事を聞いたとばかりに次の言葉を吐き出す。どこかで聞いていたと、そんな話をしていたな、と告げるように



「 俺を世界樹へと流す、だと?そんな事、させるかよ… 」



思わず軽くおはよう感覚で手を上げようとした私はふ、と固まった。軽くスルーされている気がする。やばい、あの海のときのせいで彼はもしかしたら私に不審者疑惑を持ったんじゃないだろうか。風邪引いて高熱になりながらもぬれたままで服を乾かそうともしないおかしな人間。むしろ、風邪ってなんだ?って感じだったからそこまで不快感は思われて無いとは思いたいけれど、嫌われてたらどうしよう、



「 俺を生み出したのはおまえ達だ。生みっぱなしで、後は捨て去って、無に帰れだと? 」



生み出しておいて育てないと、こうなるんだろう。ありったけの不快感を相手にぶつけて、受け入れる事をしてくれる人がいずに不快感を抱えて、受け入れて抱え込んだ彼はこんなにもつらそうな顔つきで訴えているのに。手を差し伸べられずに、目が合って彼は泣きそうな顔をして目をそらした。嫌われてるのかもしれない!どうしよう!



「 まっぴらごめんだ。おまえ達は死ぬんだよ。世界樹も、この世界も、俺と共にな 」

「 死なないよ 」



エールが呟くように言えばゲーデの顔つきが変わる。
彼の表情は全て、全て、負の感情の詰め合わせみたいになってしまっているのも、ここにこの世界に来てわかったことだし、ゲーデは本当に赤ん坊のようで癒されるというか



「 俺が憎いか…、ディセンダー 」

「 ゲーデが憎いなんて思った事ない。わたしの事を嫌っていても、嫌がっていても、わたしはゲーデすきだよ?お姉ちゃんもそう思ってるし、ゲーデ、あのね―― 」

「 ――なぜだ! 」



ああ、かわいいなあ。
不謹慎なのはわかっているんだけれども、どうしても可愛い。何でかわからないくらい可愛い。お姉ちゃんは妹も弟も大好きです。なぜだ!って叫んでいても、苦しそうな顔をしていても、エールのことをどれだけ嫌いだと言っても、きっとあの子も私も彼を嫌う事なんて出来ないんだろうなあ



「 なぜ、武器を取らない! 」

「 傷つけたくないもん 」

「 なぜそんな目で見る! 」

「 ゲーデだって、手を伸ばせばとどくものはあるのに 」



手を伸ばせば。きっと、彼は苦しみから解放されるという意味だとすれば



「 ならば、こっちから行くまでだ 」

「 やだよ 」

「 やだって、 」

「 ゲーデ、いい子だってわかるから 」

「 いい子って何がだ、勝手にそんなこと 」



ぎゅうっと握られる感覚。指の間をするすると通り抜けていくように絡められていく、いつもの手や指にふと微笑んでしまう。これから何を言おうとしているの構った区を持ってわからないけれどきっとこれはエールの主張だし、お姉ちゃんとして弟に物を言うときがくるとはわかっていたけれど、こんな熱い時だとは思いもしませんでした。



「 お姉ちゃんと手を繋げばわかるよ!お姉ちゃんが教えてくれるもん 」

「 あの、エール? 」

「 ゲーデが思うほど、人は悪いものじゃないし、怖くない。あったかいの! 」

「 いや、あの、手、流石に熱いって言うか、汗が、 」

「 ゲーデは知らないだけだよ!勝手に怖がって、うらんで、楽しくない! 」



むすっと頬を膨らませてそうはっきりと吐いた少女に私はゆっくりと目をそらす。いつからここまではっきりと物申す子になったんだろう。私はそこまではっきりという人間だったっけなあ。心の中ではすっぱりとはくけれど、それも大体は突っ込みの部分だし、あれ?一体この子、どこで学んだんだ、それ…



( 負ばっかりの世界は楽しくないかもしれない )
( でも負が無い世界も楽しくないことを知っているのかと考えたら )
( 確実にそんなこと考えて無いんだろうなあ、なんて思うんだけど )

11/0413.




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