「 クロエさん。ここのところ元気がありませんがどうかしたのですか? 」
じんわりと汗がにじみ出る火山の中で、ミントがそう問いかけた。私は横目で見るだけで何か言おうとは思わなかったけれど思ったより火山ってきつい気がする。熱いというか、皮膚が少しビリビリして今にもはがれてしまいそうな感じがする。皮膚と言っても首とかちょっとしたところしかでてないけれども。大きく言えば、顔がビリビリする。痛いよりもなんか、なんだろう、酷いって言えばいいのかなあ
「 いつまでも、こうしていてはいかんなと思ってな 」
「 このお仕事は、あまりお好きではないのですか? 」
「 この仕事は悪くない 」
即答した答え。その言葉は嘘ではなかった。この仕事、アドリビトムでのギルド活動は悪くないと、口にしたのに目はどこかうつろに見えて、ゆっくりと汗を拭う。熱いって一言口にするまでにどれだけの汗を流す事か…!汗が止まらないというか、いっそ肩にタオルをかけていたい。帰ったら風呂だな、風呂
「 だが、私には目的があるんだ 」
強い、言葉だった
「 アドリビトムにいると、目的を忘れてしまいそうになる…。それが怖いんだ 」
「 もくてき? 」
「 私の家は代々騎士を輩出する家系だった。だが私が幼い頃、両親が死に、お取り潰しになったがな 」
あまりにも強い言葉を久々に聞いた気がして、汗を拭う手を止めてじいっとクロエを見てしまう。エールは先ほどからずっとクロエを見つめては、流れる汗を気にする事もなくただ見つめて、不思議そうに首をかしげては見つめるを繰り返す。何を考えているのかは流石にわからないけれど、きっと大切な事を考えて何かに躓いたんじゃないんだろうか
「 でも、騎士としての意思は、この胸にある…。いつか必ず、騎士の位を取り戻すのだ 」
本当に、そうなのか。と今聞いてしまえれば、クロエは私に、皆に自分の寂しさを教えてくれるなんて思えなくて口に出せなかった言葉を飲み込むみたいに、息を吸い込む
「 私はヴァレンス家を建て直したい。そのために、この境遇に甘んじていてはいけないと… 」
「 クロエさん… 」
口に出せなくて、のどの奥に詰まってしまった言葉をゆっくり飲み込む。甘んじているのは、クロエなんだろうか?この状況に甘んじているのは誰でもない私なんじゃないんだろうか。だって、今もこうして、嘘をついてまでここにいるのは
「 もう、やめよう。…変な事を話したな。付き合わせて悪かった 」
私自身の事情につき合わせてしまっているのは、紛れも無い私なんだろう
「 気になさらないで下さい、クロエさん 」
「 クロエの目的は、かっこいいね 」
「 そう、か…? 」
「 お姉ちゃんはお家を建てるのが目的で、ええとね、わたしと皆と一緒に住むの 」
「 それは楽しそうだな 」
紛れもない、私自身がこの子達を巻き込んでしまっているのかもしれない。巻き込まれたのではなく、まるで初めからいるように振舞って、傍にいて、大切なお仕事にも顔を出してしまって。これで最後に何かあったら責任をとれないのは、
私だという事を忘れていた( 浅葱さん? )
( どうかしたのか? )
( あまりの暑さに、意識がぼうっとしちゃってさ。早く進もう、熱いのは駄目だ )
( お姉ちゃんは、冷凍庫の中にすみたいって言ってたもんね )
( それは違います! )
11/0413.
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