「 お姉ちゃん、ただいまー!あのね!見て見て!これがキメラ・クラスターって言って、えっと、なんだっけ、ほうせき、が沢山まざった奴で、これが一つの、ええと 」



クリスタルのような透明な輝きを幾つも備えた石を私に見えるように持ちながらエールが必死に言葉を紡いでいた。私はというとすっかりシャボン玉遊びに飽きてしまい、ストローを銜えたまま、そのキメラ・クラスターとかいうマターを見てみたけれど、確かに綺麗だと思う。宝石の融合。欲しいとは思わないけれど、何か引き込まれるようなものが此処にあるようで、目が離せない



「 キメラ・クラスターって言うのか…随分と綺麗な、 」

「 エール、あんまりそいつに無茶させねえ方がいいだろ 」

「 あ!そうだ、お姉ちゃん熱は!?朝も起きてたけど、 」

「 大丈夫。もう下がってはいるから 」

「 本当?もう辛くない? 」

「 本当でーす! 」



精一杯元気のように振舞うつもりで、キメラ・クラスター!と戦隊チックなポーズをとってみるとエールも嬉しそうに笑ったがアッシュだけは眉間に皺を寄せていた。そのまま皺が増えて若いのに大変ですねえ、とか言われればいいのに。むしろ、私が言ってあげるのに



「 なんか必殺技みたいで少しわくわくするねえ、キメラ・クラスターって 」

「 そりゃお前だけだ 」

「 夢の無い青年にはきいてませーん。ねー? 」

「 ねー 」

「 屑が! 」



八つ当たりされてしまった。
何か地味にショックだが、子供心のわからない奴に怒られてしまうとなんだか複雑な気持ちになる。キメラ・クラスターってカッコイイと思うんだけどなあ



「 このあしゅーめ! 」

「 あしゅー!あしゅー! 」

「 やめろ!馬鹿かお前らは!! 」

「 あしゅーのばかー 」

「 アッシュのイケメーン 」

「 …っ、お前ら…!! 」



エールの悪口に続いて私が褒めてみたら、はっとしたように顔を赤くしていくアッシュ。その鮮やかな髪色とは違う赤さに私はふふん、と口角を上げてエールは目を真ん丸く開いて首をかしげた。これだからアッシュをからかうのはやめられないんだ。可愛いというか、なんか癒されるんだよなあ。ルークとは違う癒しがここにはある…!



「 お姉ちゃん、鉱山の中でこれ見つけたの 」

「 四葉の、クローバー? 」

「 ハロルドがね、もってると幸せになれるって言ってたから2つ見つけてきたんだよ。浅葱お姉ちゃんにあげる 」



はい、と前に出された二つの四葉のクローバーに私は一つだけ摘むように引き抜くとエールがまた首をかしげるので、その綺麗な鼻をちょいっとつまんで



「 四葉のクローバーは一人一つじゃないと、欲張りだとみなされて閻魔様が出てきちゃうんだぞー 」

「 え、えんまさま…!き、きいたことある、すっごく、こわいって、ジェイドが、 」

「 欲張りな奴は地獄送りにしてしまうぞお! 」

「 あ、ああ、ご、ごめんなさい、ひ、一人一つに、する、するから! 」



鼻をつまんだ指先を離すと、あわわわわ、という様子で目をキョロキョロさせていた。一体ジェイドから閻魔様の何の話を聞いたんだろう。まあ、私も普通に嘘をついたからあまり深入りするわけにはいかないし、今度ジェイドに聞いてみるとしても、



「 お姉ちゃん、クローバーで幸せになった? 」

「 なったよ、すごーく幸せ 」

「 うれしい?たのしい? 」

「 そりゃもう!それにキメラ・クラスターも見れたんだよ?嬉しいし、楽しすぎる! 」



おかしいくらいにハイな口調で言うと、目を輝かせてキメラ・クラスターを持って笑っている。



「 皆にも見せてくる!きっと楽しいし、綺麗だもん。喜ばれるから、いってきます 」

「 いってらっしゃーい 」



ホールへとかけていく、小さな救世主を見ながら、ストローをかむと、ぷわっと小さいシャボン玉があがった。まだ微妙に残っていたらしい洗剤が形になるとアッシュがそれを目で追いかけてゆっくりと息をついて、視線を私へと戻す



「 お前は実は馬鹿だろう 」

「 …そうかもしれないけど、アッシュに言われると腹が立つな 」

「 誰になら言われても腹がたたねえんだよ 」

「 いや、アホならまだ許せる 」

「 アホ 」

「 ごめん、やっぱ無理だ。覚悟してくれ 」




( 何してるんですか、二人とも )
( うるせえ黙ってろ! )
( 殴り合いじゃ勝てないんで指相撲するんだ!ちょっと、開始の合図だけお願い )
( 嫌ですよ、面倒くさい )
( ジェイド、お前ええええ! )

11/0411.




- ナノ -