部屋に戻ってきてもやっぱり眠れなくて何度も何度も目を閉じても、ゼロスは悲しそうな声でまた言う。私の体の事情を知ってしまった人は皆そう思ってくれているんだろうか。忘れられるわけが無いと、そう思ってくれているんだろうか。皆を蝕んでいるモノに抗うように皆がそう思ってくれているんだとしたら。私はそれになんて答えるのが正しいんだろう。優しく?暖かく?答えなんて、事実しかないから全然浮かばない



「 何しているんですか、こんな時間に 」

「 ジェ、イド 」

「 見回りに来て正解でした。本当に出歩こうとしているのは正直、ただのバカくらいなものだと…浅葱? 」



なんて答えるのが大事で、傷つけないようにする事は無理のような気がしてきた。わからないどころか浮かばない答えを永遠に考え続けるような感覚に、少し吐き気がする。



「 また、一人で考え込んでいるんですか? 」

「 …、 」

「 知恵熱がでますよ 」

「 でないよ! 」



バカにされすぎな気がしてきた。もう嫌なんだけど、何でそこまで馬鹿にされなくちゃならないんだ!こっちは一応必死に考えているって言うのに、もう、この人は相変わらずと言うべきか、そんなに大した悩みじゃないだろうとばかりになんでそんな風に言ってくるんだろう。バカだって見られているのは最近知ったけれども



「 それで、何を思い悩んでいるんですか? 」

「 いや、それは、 」

「 紙飛行機の上手く飛ぶ形ですか?それとも、 」

「 真剣みの欠片も無い内容だな! 」

「 前に悩んでいたじゃないですか 」



そういえば、そうでした!
いやいや、だからそれどころの悩みじゃないんだけれども、ああなんであのときの自分紙飛行機なんて無邪気に作っちゃってたのかなあ!もう!子供じゃないんだから、そんなことしたって、すごく楽しかった!



「 あのさ、ジェイド 」

「 なんでしょう 」

「 人は、最後にどこに行きつくんだと思う? 」

「 は? 」

「 変なこと言ってるのはわかってるけど、ええと、だから、 」



心のうちを吐き出せたら、



「 人には終わりがあるのに最後がないのかなあって 」

「 …また、面倒な事を考えていますねえ 」

「 …そう言われると、何だか申し訳ないです 」



どれだけ楽なんだろうなあ。私の思っている事を全部全部、誰かに押し付けるみたいに吐き出せたら皆は私になんていってくれるんだろうか、なんて優しい言葉を期待したまま、ゆっくりと弱い私はまた、嘘ばかり思い浮かんでしまう。何を言えばいい、どうすればいい、なんて考えて、考えて、自分の思う事を、そっとしまいこんで



「 人は、体と心が別ですからねえ 」

「 え? 」

「 その反応は、私がこんなことをいうとは思っていなかった、といいたそうですが 」

「 うん、まあ… 」



ジェイドに心とか言われるとは思ってなかったけれど。実際にこういわれると歳の差を少し感じてしまう。本人には絶対に言わないけどね。言ったらこの口の形が変形するか、傷ついた振りをされながら私の肢体のどこかが支障をきたす事だろう。相手は策略家の鬼だ。言ってはいけない事はそっと控えておこう、私も大人だし、ちゃんと耐えられる。大丈夫だ、私なら出来る



「 人でなしに言われると思いませんでした 」

「 それは、お前の事だ! 」



すいません、できませんでした。
こうも大人になれなかった自分を反省する日が来るなんて思ってたよ、物凄く思ってた。心に決めた瞬間を見計らったように言葉を吐いてくる鬼畜眼鏡に勝てる気なんてしなかったさ!くそう!どうしてだ!



「 そういえば、その疑問に関して私の意見を言わせていただくならば 」

「 うん 」

「 魂、一緒くたにすれば心は生まれ変わりなどがありますから、終わりではないんですよ。終わりがあるとすれば私達の形、人体だと私は考えていますが 」

「 じゃあ、人体が終わりで、心は最後、ってことか 」

「 それがどうかしたんですか? 」



私の体の終わりは消えた時だとすれば



「 似たような言葉があるから、きっと前の人達が思ったんだろうって考えたら気になっただけだよ 」

「 今貴女が考える事にしては、あまりにも 」

「 んー? 」

「 あまりにも現実的過ぎますよ、その疑問は 」



私の心は、どこへ帰るのか。
体も本当に消えてしまって無くなるのか、それとも自分の住んでいた地球に帰れるのか。なにもわからなくて、ただ、思い浮かべるように



( 魂だけでも、あの子達のところへいけたならば )
( それはあまりにも美しすぎる愛だから )
( 魂は、いっそ海に溶かしてしまおうか )

11/0409.




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