目を覚ますと、目の前に白くて丸くて長いの物が合った。確か、これは紙コップだ。いやいや、でもなんで紙コップが私の目の前にあるんだろう。そもそもこの紙コップ糸がついてるし、糸電話みたいで懐かしい。むしろ、これ糸電話なんじゃないのか?でも、これを誰が作るというんだ。こんな懐かしい産物この世界では普通、とはいえないしなあ。いざとなればハロルドが無線に似たものとか作りそうだし、



「 はっくしゅん! 」

「 お姉ちゃんの声が聞こえた! 」

「 本当に糸電話!?発想が古い! 」

「 ふるい? 」

「 違う違う。粉をサラサラにするほうじゃないから! 」



声の発音に耳を済ませなきゃいけない紙コップって何だか辛い気がする。それに糸電話という発想については何と言うか、まあ、いいんじゃないのかなあ。嫌いじゃないよ、そういうの。結構好きだし、やってみたいとは思っていたけれども、この糸どこにつながってるのか既にわからないんですが、どのくらい長いんだろう



「 …これを設置したのはエールなんだね? 」

「 違うよ?ハロルド 」

「 ああ、そうなの… 」



あの天才科学者どんなお茶目だ!それに紙コップの向きがあからさまにこっち向きなのは優しさなのか、寝言を期待してなのか、彼女のデータの採取の卑怯さを今思い知りました!なんだよ!なんなんだよ、もう!



「 あのね、ハロルドがお姉ちゃんは風邪引いてるから部屋に入ると風邪がうつるって言ってこれを作ってくれたの 」

「 理にはかなってるとは思うよ。糸電話だし 」

「 …糸電話って言うんだね、これ 」

「 そうだよ。この電話は糸で繋がってるからね 」

「 糸?糸じゃないよ? 」

「 え 」



じゃあ、何で繋がってるんでしょうか!
え、なんなの?本当に気になるんだけど、糸じゃないなら何電話!?



「 糸の変わりに、マナを少し取り込んで作った、ええと、なんだっけ… 」

「 少ないマナ取り込んじゃった、とか… 」

「 お姉ちゃんから採取したやつって言ってたよ 」

「 知らない間に採取されてたというの?! 」



知らない間とはいってみたけれど、正直に言えば知っている間がありすぎてなんともいえない。ありすぎて、どこかわからない。私の体から飛んでいった時とか、むしろ髪の毛とか血液からの採取なんてことも、きっとあの天才科学者にしたら簡単な事なんだろう。でも、どこでだろう。今腕に痛みが無いから、きっと今日ではないんだろうけれど



「 そういえば、エールはもう大丈夫? 」

「 大丈夫だよ。まだ皆が顔色が悪いって言うけどね、お仕事はわたしの正しい事だから、 」

「 いくら正しくても、たまには休まないと 」

「 …うん 」

「 お姉ちゃんは、エールが無理する所は好きじゃないです 」

「 わたしもお姉ちゃんが無茶するところは好きじゃないもん 」



エールにそんな事を言われる日が来るとは思わなかったけれど、いざ言われて見るとなんだかよく見られているのが分かる気がする



「 だけどね、お姉ちゃんが風邪悪化しちゃったのは、わたしが無理に連れて行ったからだよね 」

「 え?いや、今の状態でも行ったよ? 」

「 ええ!? 」

「 エールの顔色が悪いのを気付いていながらスルーなんて出来る訳が無いでしょう?お姉ちゃんなんだぞー!お姉ちゃんは妹を無視なんてできないんだから! 」

「 …うん 」



嬉しそうに笑ったような返事に私もゆっくりと笑みを浮かべると、扉が開く音がして目を向ける。廊下の光と、同じ紙コップを持った光をまとうものがもう一つの手に何かを持ったまま私のところにやってきて、その形をはっきりとさせていく



「 お姉ちゃん、風邪にはビタミンCがいいんだって、本に書いてあったから、レモンを採ってきたんだけど、あれ?お姉ちゃん? 」

「 …風邪、うつっちゃうでしょう? 」

「 だ、大丈夫だよ!わたしも一緒にビタミンCとるし、その、 」



綺麗な黄色を持ちながら、ゆっくりと視線をおとすエール



「 お姉ちゃんがきっと寂しいと思ったから 」

「 …だから、この紙コップがあるのに 」

「 あ 」

「 ほらほら、そのレモンを待っててあげるから、あとはまた紙コップで話そうか 」

「 本当!?ぜったい?! 」

「 うん。それに、レモン食べたかったから 」



そういって笑うとエールが何度も何度も頷いて、嬉しそうににっこりと笑みを浮かべた。くそう、可愛い可愛すぎる!本当にこういうところは真っ直ぐというか、レモン今食べたら口にしみるんだろうなあと思いながらも、甘やかしてしまう私はきっと悪いお姉ちゃんなんだろう。いいお姉ちゃんって、きっと言いたい事もはっきり言えるおねえちゃんだと思います



( レモンを置いていった )
( どこに何しにいったんだろう )
( 引きずられて廊下にでていった紙コップだけ )
( 音を立てて、消えていく )

11/0405.




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