「 この山脈の中の『笛岩』を目指すのね。風唄う地… 」



風が音を立てて吹き付けると、カラカラと回る薄い板。常に吹き続けるために止まらないその音が、何故か無性に頭に響く。絶対これに罪はない。悪いことは何一つないはずなんだけれどもこの場合あまりにも自業自得過ぎて笑えないんですけれどもね。風が吹くたびにゾクゾクと襲撃を受ける背中があまりにも寒いです。いつも以上に厚着してきたつもりなのに…



「 昔から、詩にも詠まれる所よ 」

「 能書きはいい。その笛岩とやらに向かえばいいのだな 」

「 …ええ、そうね 」



足を止めていたティアが進んでいくとリオンはそれを横目で見送った。この仕事が気に入らないんだろうか。それとも今日のデザートがこだわりにこだわったプリンだったんだろうか。確か、モンブランも好きという話があったとは思うけれど、今度いたずらにプリンチョコとか作ってみようかなあ。上からカラメルソースを書けたら本物のプリンっぽく見えるかもしれない



「 ………。 」

「 ? 」

「 フン、まあ、うるさいヤツじゃなさそうなのが救いだな 」



こっちを見たリオンにエールが首をかしげる。私にも一度視線を配ったが、このマスク姿が腹筋に着たのか、口元が一瞬緩んだ気がした。笑いやがったなあの野郎



「 さっさと行け。もう足手まといになるつもりか 」

「 …一緒に行かないの? 」



純粋な発言とその後ろに経っている私のマスク姿が気に入らないのか、私とエールから視線をそらすリオン。あのおすまし坊やめ。今度本当に偽プリン計画とかしてやるんだからな。覚悟して置けよ、私は面白そうな事は忘れない性質なんだ。私から視線を逸らし続けている事を後悔する日が来たとしても自業自得なんだぞ、坊や!



「 先に行く。何があっても自己責任だぞ 」

「 え? 」

「 僕はおまえのように、能天気で緊張感の無い奴が嫌いだ 」



睨みつけるようにそういったリオンにエールがうん?とまた首をかしげ、坊やがゆっくりと足を進めていく。此処にスタンがいたら、おおおお!と私が声を上げたかもしれない私の心の声が届いたのか、数歩進んでからリオンがそのアメジスト色の視線を私へと向けた



「 あと、浅葱。お前みたいな変なヤツのことはもっと大ッ嫌いだ 」

「 はいはい、突き放せるものなら突き放してみなさい。君の事は大体わからないけれど、私は根に持つぞ 」

「 そんな、変なマスクしてるヤツに言われたくない! 」

「 え、普通のマスクじゃないの、こ、れ… 」



耳に残ったのはフン、と鼻を鳴らして歩いていったリオンの声。マスクを外してくるりと表側を見ると大きなバッテンではなく



「 …、何の落書きだよ 」



マリオの髭が書いてあった。何の嫌がらせ?いや、でも確かくれたのはカイルだったから悪意の塊だなあの子。悪戯心でこんな事をしたんだろうけれど、それ以前の問題だよ。なんでマリオなの?ブーム?この間配管工兄弟がお姫様を助けに行く英雄の話をしたからなの?絵とかついでに描いちゃって、髭だけ覚えてたとか…



( おい、本当に置いて行くぞ )
( ねえ、リオン。その辺にきのことかない? )
( …、お前は一体何をしに此処に着たんだ! )

11/0401.




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