エコ・フラワーが種になるまで、という事で思わず気を抜いて甲板で眠ってしまったのが悪かったんだろうか。なんか頭ズキズキするし、寒気がする。まずい、風邪引いたのかもしれない。いや、でもまだエコー・フラワーの種採取まで時間があるはずだ。例えあの花が完全に開花してる時に持って帰ってきたとして…も?あれ、花っていつ枯れるんだっけ、種っていつ、



「 はっくしゅ 」

「 浅葱さん、エールさん。ちょうどよかった。エコー・フラワーから種子が取れましたよ 」

「 …あ、お姉ちゃんだ 」

「 もう、種子取れたんですか… 」



気を抜くとまたくしゃみが出そうだ。鼻がむずむずする。もしかしたらその種子についていた花粉のせいかもしれない。いやいやいや、これは風邪の方が可能性としては高いと思うし頭も心なしがぼおっとする気がする。風邪確定だな。でも、このままだとバルバトス・ゲーティアとの対戦もあるだろうしあの焼きそばパン・ゲーティアと戦わせれば、もっと疲れてしまうだろうし



「 このトライライト・モスを苗床に、種を植え付ければ、『シード・ベット』の完成です 」

「 結構早かったんだね 」



お姉ちゃんとしてはもう少し遅くても問題なかったです。
むしろ、今からでもいいからもう少しだけ遅らせてくれると戦力になれ、ればいいな!いやなりたいね!エールが無理して、倒れるには見ていて辛いものがあるし…



「 んで、『風唄う地』ってのはドコ? 」

「 ティアさんからの話によると、メスカル山脈ではないかと聞きました 」

「 めすかる、さんみゃく? 」

「 はい。山を駆け巡る風が長い年月をかけて岩を浸食し、ちょうど笛のように鳴っているところがあるそうです 」



エールの疑問に答えていくフィリアを見ていると、こめかみ辺りもズキンと痛みを脳へ突き刺すみたいにチクチクとやってくる。鋭い癖に結構な頻度で攻撃を仕掛けてくる。それと同時に背筋がゾクゾクと指先まで何かが通るようにチキン肌地帯が広がっていく



「 ティアさんは、その笛岩が奏でる音域を自らの技術に取り入れるべく、行った事があるそうですよ 」

「 そうね〜、音って媒体は呪術的なエネルギーを付加しやすいからね 」

「 はっくしゅん! 」

「 …くしゃみ? 」

「 うう…本気でくしゃみがでる… 」



私の前で首をかしげるエールは、私にそっと四角い白いものを渡してきた。触った感じティッシュではなさそうなものを広げてみると、ゴムがついている。マスクだ。マスクもらっちゃった。早く装着しなければ…!



「 これで大丈夫? 」

「 うん。ありがとう、エール 」

「 よかった 」



白い歯を見せながら子供みたいに笑顔を浮かべるエールの頭を撫でるとサラサラとその髪が揺れる。



「 これで一緒にめすかるさんみゃくにいけるね 」



うん?今、なんてこの子言ったんだろう。気のせいだろう。風邪引いた私を連れて行ったところで焼きそばみたいな髪をしたパンみたいな肌色の男に勝てる訳がない。そんな人物が出てくる事を知らないエールは私にニコニコと笑みを浮かべて、手をぎゅうって下から上目遣いで見てくるエールは犯罪級に可愛いじゃなくて、いやいや、だめでしょう!風邪引き連れていっても足手まといになるって、



「 チャットにお姉ちゃんと行くって言ってくる 」

「 …まじで? 」

「 ……まさか、アンタ風邪引いたの? 」

「 つ、つい、寝ちゃってっくしゅん! 」

「 風邪薬、作ったげよっか? 」

「 た、頼みます…ふぁっくしょん! 」



マスクって便利だけど、これだけ頻繁にくしゃみしてるとすぐにべちょべちょになって気持ち悪いんだよなあ。誰かマスク持ってないかなあ。むしろ、マスクのおかげで顔の3分の2くらいは埋まってるんだけれどもこれって何用のマスクなんだろう。男性用か?女性用か?確実に前者な気がするのは気のせいじゃないとは思うけれども、それにしても持ってないかなあ



「 解熱と、あと頭痛を抑えるやつでいいわね? 」

「 うん、 」

「 くしゃみは気合でなんとかしなさい 」

「 …此処にアニーがいなくてよかった、 」

「 そうね、確実に止められてたとは思うわ。はい、これ飲んで 」



あからさまに苦そうな液体を試験管ごと渡されて、マスクを外して試験管を口につけた。多分このまま飲まなかったら今度こそ、のどに刺さるかもしれない。それだけは勘弁してくれ。この間のでちょっと喉がたまに痛い時だってあるんだから!



( あー、苦い )
( 良薬は口に苦しって言うからちょっと苦味も足しといたわ )
( …ああああああ!後味がおぉぉおおお!! )
( 苦すぎたかしら? )

11/0401.




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