「 よし…、今誰もいない…。早いところ持っていこう… 」



ホールを見てきたらしいルカがそういうとエールが首をかしげて「うん?」と呟いていた。多分、ルカの焦っている理由も何もわかってはいないのは目に見えてわかる事実を前にルカはエールをせかす。その理由は、



「 ルカー…おねしょ〜…、ルカー…おねしょ〜… 」



イリアの歌を見事にコンプリートしてしまった、エコー・フラワー。たまにエールの歌も聞こえるくらいだが、大体はこのルカのおねしょソングを歌って、繰り返す喋る花。この声を聞くたびにルカが複雑そうな表情をして、たまに泣きそうになる。まあ、気にするなと何度も言ったけれど、流石にここまでくると追い詰められて精神的にくるのもわかる気がする。あとで暖かいチーズスープをつくってあげよう



「 もう…、参ったな…。は、早く持っていこうよ 」

「 いってらっしゃい 」

「 …お姉ちゃんは行かないの? 」

「 私は場所取りしてるから、エールは用事が終わったらまっすぐ甲板に出てくる事 」



エコー・フラワーを右手に持ったままエールが曖昧に頷く。顔色は相変わらず良くない。夜は寝るのをちゃんと見届けているし、チャットと私でそれなりに仕事の制御をしているはずなのに、顔色はよくならない



「 やくそく? 」

「 うん。約束 」

「 リフィル先生はいいの?報告とか 」

「 それは、ルカとエールに任せるね 」



私がそう頷くとルカがうう、と控えめに声を発していた。残念ながら私にその花の言っている事をオブラートに包んであげる能力はないので報告の場にいてもフォローできない。それに話はある程度わかってはいるから、いっその事軽く触れないで置いて欲しい。それに必要があれば、また説明に呼ばれるんだろうから。行かなくても問題はないや



「 早く行っておいで 」

「 …お姉ちゃん、 」

「 うん? 」

「 バスタオルいる? 」

「 お姉ちゃんが用意しとくから、ほらほら、行ってこないとエコー・フラワーが 」

「 エール、早く行こう! 」



ホールへと入っていく二人の影。それにエールの聞いた言葉を考えればもうばれてしまっているのかもしれない。あの子を休ませるなら、寝かせるのが一番いい。それに甲板での日向ぼっこ兼お昼寝は前までよくやっていた事だから、すぐに思いついたんだろう。天気がいい日の日向ぼっこは本当に眠くなる



「 あら…、何だか今の聞いちゃいけなかったわね 」

「 パニール、 」

「 ふふ、 」



口元に手を当てながら楽しそうに笑うパニールはパタパタと音を立てながら、嬉しそうな声をもらす。



「 おばさん内緒にしとくわ。ホホホ… 」

「 そうしておいてあげてください。まあ、あれには色々と訳があったんだけどねえ… 」

「 そうなの? 」

「 うん 」



主にいじめっ子の苛め日記的なものがありました。まあ返事をする花という話を信じて鬼畜な質問を歌にして歩き始めたのがまず始めだったけれども、まさかその歌をエコー・フラワーがマネをするだなんて思いもしなかったあの2人は見事に、録音されたみたいに繰り返されてしまっている



「 そういえば、浅葱さん 」

「 ん? 」

「 お昼寝なら、丁度いい場所がありますよ 」



にっこり、と笑みを浮かべたパニールの指の先にあったのは



( おおおお!ありがとう、パニール! )
( あとバスタオルでしたら、これをどうぞ )
( いいの? )
( 丁度乾いたばかりのものですから、きっと暖かいですよ )
( よーし、休ませるぞ! )

11/0330.




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