「 うう…、グス… 」



完全に悪者扱いのイリアを睨むように見つめるエール、俯いて涙するルカ。そして焦るイリア。そして少し先にあるエコー・フラワーが気になって仕方が無いんですけれどもなんというかこの状況をほおって置いたら確実にいけないんだろう。なので、私もイリアをじとーっと見つめよう。例え、彼女から引きつった声が聞こえてもそれは自業自得というものだ。



「 あ、あのさ、ルカ?ごめんね?ルカはおねしょなんてしないよね 」



手を合わせて様子を伺うように言葉を口にするイリア。ご機嫌取りのポーズというか、腰が低くなったというべきなのか。多分、本当に内心が焦りに焦ってるんだろう。それにエールのあの視線にも耐え切れないといったところだろうなあ。私だったら耐えられない。あまりにも純粋な視線は人の心に突き刺さる



「 むしろ排尿そのものをしない人種だもん 」

「 何なの、それ… 」



わずかに漏れる笑い声に、イリアが微妙に笑みを浮かべる。微笑とかではなく、よし、泣きやんだ!次はなんて言葉にしよう!と言った様なニヤリとした顔つきだったためにエールの視線は変わることなく、ただじとーっとイリアを見つめている



「 よっ!ルカったらお利口!ルカったらナイスガイ!ルカったらもう、ステキッ!! 」

「 も、もう…。よしてよ、からかうの… 」

「 ルカ、スカーフ似合ってるぅ〜vもう最高〜!! 」



よいしょを繰り返されて、ルカが照れたように視線をそらす。それにはっぱかけるイリアの姿は、さっきはじめてみたはずなのに何故か慣れてきてしまった。まさか、私の見ていないところでこうやって泣き止ませていたんだろうか。いじめっ子はそこまで備えているとなると普通のいじめっ子ではなくなるぞ…!『後始末の出来るいじめっ子』だ



「 ルカー…おねしょ〜… 」



そして、魔法の言葉のせいでうな垂れるルカ。イリアは右、左と視界を確認しうな垂れてしまったルカを壊れ物のようにそっと覗き見たがルカの表情は思わしくなかったようだ。妙に上擦ったような焦ったイリアの声が次に聞こえる事になったのだけれども



「 ち、違っ!あたしじゃないってば! 」

「 ルカー…おねしょ〜…、ルカー…おねしょ〜…、ルカー…おねしょ〜… 」



歌だけが妙に反響して聞こえる。
ただのいじめっ子が増えたように聞こえるそれに、エールが回りを、イリアは静かに耳をすませる。



「 そこォ! 」



ビシィッと指差した先には



「 お花? 」



内側が赤っぽく外へと黄色に変わる花が砂漠の砂の上にひっそりと咲いていた。綺麗な緑の茎と葉が対照的な砂漠の地に映えるけれど、その花が吐き出している言葉がエールの歌っていた曲の歌詞が所々。そして主に聞こえるのは



「 ルカー…おねしょ〜… 」



この、ルカを追い詰めるような声だけ



( 自分の言葉に責任を持てというのは )
( こういうことなんだよ、とエールに吹き込むと )
( 複雑そうな表情で、しっかりと縦に頷いた )

11/0328.




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