砂漠、というのは初めてだから一応露出を少なめに、水分大めに。といった準備をしてきたものの足元から70cmくらいまで砂煙が巻いていて足元や先のほうが上手く見えない。砂を吸い込まないように薄手のストールをアイテムの入ったポーチから取り出して巻きつける。いっそ、アラビアンナイトとかに出てきそうな格好をしてくればよかったんだろうか…いや、でもあれは外人の顔とスタイルだからいいのか。無理だな私



「 エコー・フラワーかぁ。人の間では知られてないのに、鳥は知ってるんだね 」

「 ルカ、鳥しか知らないことをどうやって探すつもり? 」

「 そういえば…。どうやって探すんだろう… 」

「 わたしも知らないよ? 」



ルカが腕を組んだまま首をかしげ、私も同じように首をかしげる。エールは周りのサボテンを見て、針のような棘を見て口元を引きつらせていた。私は忘れないぞ、小声で呟いた『ちゅ、ちゅうしゃ!?』の言葉を。確かに似ているとは思いますけれども



「 んで、結局どーすんのよ!こんな所でウロウロしててもしょうがないでしょ? 」

「 この辺り、イリアの出身地だって聞いてたけど… 」

「 うん。わたしも、そう聞いたよ? 」

「 私は、なにも聞いていないけど…そうなの? 」



3人一斉にそんな視線を向けるとイリアがゆっくりと視線をそらす。『頼りにしているよ』の視線を『なんでそんな視線向けてくるわけ!?』という感じにそらされてしまっては此処から先を歩く訳には行かないんですが、何か方法はあったっけ。砂煙が目に入りそうでうかつに目も見開けないしなあ



「 ああっ、もうホンット、くだんない事覚えてるのね、ルカって! 」

「 … 」

「 … 」

「 …あ、注射じゃない 」



誰だ今のは。いや、確実に我等がディセンダーの発言なんだろうけれども何と言うか私の気が抜けた。サボテンまだ見ていたんですか。見ているのはいいけれど体当たりしたり、つかんだりしないように一応横目で見張っておこう。痛みに負けて多分泣くだろうからね!



「 そ、そんな目で二人して見ないでよ〜 」



ゆっくりと視線を砂埃に向けてそらすイリア。サボテンを睨むように見続けるエール。そしてその視線をそらしたイリアの視線を追うようなルカ。全体を見ている私。そんな中、イリアがはっとしたようにこちらに視線を戻し、手を合わせるとパンッと大きな音が響いた



「 あ!いい事思いついた♪返事するんでしょ、その花ってば 」

「 どうやって? 」



ルカがそう聞き返すとイリアが意地悪な笑みを浮かべ、エールがその表情に何かを思い出したようにぱっちりと目を見開いた。多分、あの笑みを見て思い浮かぶのは若草の青年とイリア本人くらいしか…いや、スパーダだけで十分威力はあるな。たまにからかわれてるのも見たことはあるし。助けた事はありません。エールは必死に会話に噛み付いてるから、必要ないかと思って



「 ルーカーはー!三日に一回ぐらいおねしょするの〜〜〜? 」

「 わわわわわ!!イ、イリア、やめてよっ!! 」



そして、今此処に鬼畜が降臨した。



「 そ、それに、この砂漠でずーっとそう叫びながら練り歩くの? 」

「 だって、返事するんだからハイかイイエくらい答えてくれそうじゃん 」

「 いや、いくらなんでもそんな返事はしないと思うんだけど… 」



このあとルカに悲劇がやってくるだなんて誰も考えもしないんだろうなあ。いや、私もはじめてやったときは気付かなかったよ。返事っていうから、九官鳥とかを思い浮かべたのは私だけじゃないはずだ。いや、九官鳥とかと同じなのかエコー・フラワーっていうのは。どういう植物の進化があったんだろう。頭がいい植物、とかそういう部類なのかな?



「 さあ、あんた達も叫びながら行くの!! 」

「 え、ええと、あるひー!もりのなかー! 」



そしてルカの悲しげにうめくような、服をぎゅっとして視線を落とす姿。突っ込みどころが多すぎてなんと言えばいいんだろう。まず、此処は森じゃありません。砂漠だよ!それと叫びながら行けば水筒なんて一瞬にして消えるんじゃないのか!?予備も持ってはきているけれど、むちゃくちゃだよその作戦!



「 ルーカーはー…! 」

「 くまさんにー! 」

「 …ルカ 」

「 な、なに? 」

「 私はもう疲れた 」

「 ええ!? 」



なぜこんな時にチェスターがいないんだろう。あの天性のつっこみが恋しく思う時期があるだなんて考えもしなかった。ジェイドは一度も恋しくはならないのに、チェスターにだけ恋しくなるなんて…



( でああったー! )
( …浅葱が止めてくれなかったら、僕、 )
( いや、現実に向かい合った結果…無理だって言ってる )
( そんな!とめてよ! )
( 今の短時間に物事がありすぎて捌き切れんのだよ! )

11/0328.




- ナノ -