やっとの思いで見つけたフナムシをエールに見せると目をキラキラさせて喜んでいた。そんなふうに喜ばれるようなものではなかったとは思うのにどうしてかその表情を見てしまうと口が緩んでしまうもので、少し嬉しいような不思議な気持ちになる。ついさっきまで怯えてたって言うのにね。
「 カノンノ、エール。少しいい? 」
今にも折れてしまいそうな心をしっかりと打ち直すために、二人に声をかけるとエールはフナムシを気にかけながら私へと視線をむけた。
「 どうしたの?浅葱 」
「 いや、なんていうか、さ 」
「 浅葱お姉ちゃん? 」
「 君たちは、私が護るから。怖かったら、嫌だったら…無理はしないで 」
人と戦う前だから。せめてこうやって私自身に言い聞かせて、この子達を護ると優しく頭を撫でてあげる。不思議そうに首をかしげた姿もよくわからなさそうに頷いた姿も。理由が説明できない私は、この子達を護るとだけ言って目先の人影に必死に頭をめぐらせた。きっともうすぐフナムシに集られそうだったんですね。だなんて思いながら
「 大丈夫か、ルーク 」
「 岸にたどり着くまでに右肩を外しちまったみたいだ。けど、利き手じゃねーし、大丈夫だって 」
「 いや、お前は動かない方が良い 」洞窟の特徴として反響する声にエールがフナムシを観察するのをやめ、私の横にピッタリとくっつく。じっと私の視線の先にいる二人を見てエールが私の手を握った。
「 あの人達かな? 」
「 浅葱お姉ちゃん、あの人、怪我? 」
「 …多分な 」
遠目から見ただけじゃ私はそこまで分からないけれど。たしか、私達の探しているやんごとなき身分の人は肩を外して無理やり寝かされているのだ。傍にいるのが極端な心配性で良い奴すぎるから、なんだけどね
「 全く、ジェイドもティアもどこにいるんだ 」
「 ガイ、心配だ。探しにいってやってくれないか? 」
「 ここにおまえを置いていったら、ヤバイだろ。何とかしてやるから、もうちょっと寝てろ 」心配そうに頭をかいた金髪碧眼。他の仲間を心配する赤髪短髪。二人とも会話を聞いている限りとてもいい人なんだが。私回復術使えるけれどキールに教えてもらってからあまり練習していないのでちょっと不安です。あの赤髪短髪のルークという少年のかすり傷なら治せるとは思うけれど
「 ねえ、 」
私が軽く声をかける。金髪碧眼の男、ガイがばっと私を見てから後ろの二人を見た。きっと判断は間違ってないとは思う。護りたいものがあるってこんなにも人を緊迫感へ追い込むんだってわかるから。でも私はそのまま口を開く
「 君らを探してたんだけど 」
「 で、このまま俺達を捕まえる気か?やってみるのはいいが、こっちもそれなりの対応はするぜ 」
「 ちょっ、お前、もう少し人の話をだな…! 」
なに早々と自分の武器引き抜いてたんだ、金髪碧眼のイケメンめ!赤い髪の方なんか心配そうに肩を押さえて見守ってるし、っていうか肩外してるなら無理に身体を起こすな。ああ、もう、人に刃を向けるのは嫌だから鞘のまま使わせていただくけど。覚悟し、
「 違う!話、聞いて! 」
「 浅葱!エールが、 」
「 エール、今のそいつが話を聞くようには見えない!剣を抜け!! 」
まさか、さっきのジェイドの時で所為で手が痛くて柄が握れないってことだったら?余計前に出たら危ないどころじゃない。それは、確実に、あの子が、
死 ん じ ゃ う ?
笑えない冗談だって( 考えただけで吐き気がした )
( カノンノが傷ついてもあの子が傷ついても )
( 私は、傷つけた相手を許せない )
10/0820.
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