あのイケメンパパどこに行きやがったくそう!足はもう重たいし、男性陣の部屋を片っ端からあけてシーツをひっぺがえし、女性陣の部屋では備え付けのタオル交換をしながら駆け巡りやっと最後の最後にたどり着いた展望室にその背中があった。イケメンパパは立ち姿も妙にイケメンのようでこんな朝っぱらから酒でも飲んでいるのかと思いながら隣に座ると、一度目を向けてきてから水をくれた
「 ありがとう、 」
「 …ああ 」
コップを置きながらクラトスをみると少し俯いているというかチラリと見えるその耳に不覚にも指を伸ばしたくなって押さえ込んでゆっくりと呼吸を繰り替えす。いや無茶したのはわかっているんですけどね!?無茶しすぎたというか勢いで何でも出来るとか思い込んでいたのがきっと間違いだった。もう足と腕が痛い。
「 ど、どうして、私を? 」
ぜえ、ぜえ、と息を吐く私がそういうとクラトスは静かに水を口に運ぶ。イケメンパパを探すのは結構困難というか精神的に疲れがくるものだという事を知らされてしまった気がする。そうか、行動で教えるとはこういう…じゃない!
「 今は聞くな 」
「 でも、 」
クラトスがコップを置く音が、耳に妙に響いて続きの言葉が出てこなかった。たった二人だけこの展望室にいて、響かないはずのないその音は妙に鳥肌が立って、唇が小さく震える
「 お前には、 」
「 …、 」
「 お前には、いつか言うはずだった事だが、私はうまく伝える事が出来ない 」
「 クラトス、少し待っ 」
「 その場につけば、説明できるはずだが 」
マンダージで、なにか私に関係する事でもあるというんだろうか?関係したとしても詳しい事は何もわからない。それに地下都市で何か関係するとしたらなんだろう。地下鉄くらいしか思い浮かばないけれど、このグラニデには地下鉄はない。でも、クラトスが嘘をついているような顔には見えないし、
「 一つだけ、『今』教えて 」
「 …いいだろう 」
「 私でなくては駄目なの? 」
震えっぱなしの唇と指先が視界に入ったのかクラトスが私のいないほうの斜め下を見た。まるで痛々しいものを見たようなその行動にゆっくりと震える指先で拳を作って膝のうえで握り締める
「 言ったはずだ 」
その目は、私のほうを向く事はないまま
「 お前には、いつか言うはずだった。と 」
「 ……そう、だったね 」
少し落ち着いた呼吸、未だに落ち着かない心拍音にゆっくりと腰を上げる。どんな時にも私に深入りをしなかった彼に私が深入りをするというのも、都合の良すぎる話なのだから。それに、私は彼のその物事に今立ち入らなくともきっとすぐに答えが出る
「 その場所につけば、答えはわかるわけだね 」
「 ああ 」
「 あの子だけじゃない、意味が 」
「 …そうだ 」
もし、ここで私がマンダージに行きたくないとだだをこねたりしたらいつもみたいに彼は苦笑してくれるんだろうか?いつもみたいに暖かな眼差しを向けてくれるんだろうか?なんて考えてしまう私は自分にも甘いみたいで
「 甲板に、いるから 」
「 そうか 」
「 …うん、 」
真実を知らされるような気がして、昇降機に手間取るほど膝が笑うし指先の震えも止まらない。どうしよう、どうしたらいいんだろう。これじゃあ、私は
泣いてしまう、のに( 下唇を噛んで、目頭を押さえる )
( いつものクラトスと少し違う雰囲気が )
( 何だか怖かった )
11/0315.
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