「 ルチルブライトは手に入ったものの… 」



呼び出された先、科学部屋でフィリアボムを抱えたままため息をつく美人神官フィリアがいた。多分ここで余計な言葉を発すれば確実にあの爆弾でボーンッという結果が待っているんだろう。たまに思うけれどフィリアって変な天然というか、その天然が怖いというべきがなんとも言いがたい時がある。しかも思い切りの良さは高いほうなので余計に怖い



「 暗くて深い所にあって、しかも乾いた『街』…。全く見当がつきませんね 」



マンダージのことかああああああ!なんて叫んでしまったら確実にそのボムがこちらに飛んでくるんだろう。エールも微妙に興味があるようでそのボムを見つめて首をかしげていたりするのだけれども。



「 ハロルドさんも、心当たりはありませんか? 」

「 さぁ 」



さっぱりとした返事が科学部屋の中に飛んだ。尊敬しているハロルドに対しては特に何もしないらしい。それにあのフィリアボムのマークが向けられている先は他の誰でもない私なんだけども。いざとなったらあのボムを氷の棺に閉じ込めるなり何なりしなくてはならない気がする。



「 この船、ドリルでもつけて地下潜行用に改造して、掘り進んでいけば見つかるんじゃない? 」



発想の自由さがやっぱり天才科学者への道なんだろうか。でも自由すぎるというか確実にハロルドをすき放題にやらせたら世界が何個あても足りないんだろうなあ…



「 穴だらけにして地盤沈下引き起こしそうだけど 」

「 でも、ニアタから受け取った情報は確かに『街』だったのよ 」



女性二人の意見にフィリアの表情が歪む。
終わりのない口論と言うべきか、こればかりは彼が来るのを待つしかない。暗くて深い、乾いた地下都市への道は彼しか知らない事を私が知っているから、ただ静かに待つ。廊下からの音を聞こうと澄まされる耳に聞こえた音は



「 エール、知りたいか。その場所を 」

「 …うん 」



部屋に入ってきたクラトスはそう尋ねた。頷いたエールの視線は輝き、ハロルドが一瞬だけ眉間に皺を寄せてすぐにクラトスへと視線を移した。ついにこのときが来たというべきなのか、マンダージまでの道は結構長いようにも思われる。その場所を知るというのはクラトスにとっても覚悟が必要だったのかもしれない。そう思うだけで



「 浅葱、お前もだ 」

「 え!? 」

「 ちょっと待って。クラトス、知っているの? 」



その場所を。と聞かなかったリフィルにクラトスは何も言わなかった。
頷く訳でもなく。リフィルの目を見るわけでもないままただ背中を向けて扉の前に立ち



「 船長に依頼を届けておくがいい。私がエールと浅葱に同行しよう 」



そういって開いた扉の先に消えていく背中に何も見出せなかった。なんで私もなんだ?それにクラトスにしてはあまりにクールすぎる対応と言うべきか必要なら喋ってくれるはずなのに、どうしてリフィルにも何も言わなかったんだ?くそう、気になる消え方しやがって!クールな男め!



「 お姉ちゃん、 」

「 エールは依頼を請けてきて、私はクラトスから聞くから 」

「 え…う、うん。でも、 」

「 ごめん、お願いする 」



ただ、そう呟いて科学部屋を飛び出した。走る足音だけが妙に響いて、私が呼ばれた意味がわからなかった。もしかして物語にかかわりすぎたんだろうか。そうだとしたらまずい。それにあの話は、ディセンダーにとって大事な事を教えるところの話だ。それなのに、どうして私を彼はあの場所へ連れて行こうとしているんだろう



「 地下都市に、何かある? 」



もし、それに意味があるのだとしたら、



( 思い出したくても思い出せない記憶 )
( なんで料理のレシピしか浮かんでこないんだ! )
( 地下都市、地下都市に、一体何が… )

11/0315.




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