ドーン、ドーンと降りかかるような音。水がはねる音。朝からこんな音がするだなんて一体どういう事だ。なんなんだ、一体何が…いや、まず目を開けないと状況確認できないけれど目を開けるときっと信じたくない現実が待っているのはわかっているからまだ眠っていたいというか寝るのが好きだから目を開けるのが、目覚めるのが少し抵抗があるというか、布団が暖かくてさらにちょっと重みがあるからまだ寝てていいって言われて…重み?
「 おはよう、浅葱お姉ちゃん 」
「
…ああ、おはよう 」
お目覚めスマイルを浮かべたエールは私の布団の上に座っていた。道理で重みがあったわけだ。でも多分ひっくり返そうと思えば簡単にコロンって転がってしまうんだろうなあって考えられる私はきっと頭が寝ぼけてるんだ。なんだか驚けない。
「 お姉ちゃん 」
「 …ん? 」
「 大砲、いや? 」
「 まあ、安眠妨害だけど 」
あ、大砲って言葉覚えたんですね。チャットかなんかが言ってたんだろうけれども。それにしても大砲か。バンエルティア号が襲撃されてるわけじゃ無さそうだしまだ寝たいな
「 バンエルティア号、周り、ドカーンって、音一杯 」
「 …ってことは、 」
あれ?本編ですか?じゃあなんて主人公私の上でニコニコ笑ってるの?ちょっと貴女甲板で状況を聞いていないといけない人じゃ…?私寝てる場合じゃないよ。この子連れて行って状況理解して本編に参加させないと!主人公さのカケラもなくなって空気になってしまう!
「 エール、見に行こうか 」
「 ?うん 」
「 …もしかして、見るの嫌だ? 」
「 ううん 」
エールはお構いなしにさっさと着替え始めた私にエールが私の手を掴む。
「 船、 」
「 船がどうしたの? 」
「 なんで、打つの? 」
「 …私にも分からないよ、エール 」
本人じゃないからわからないんだよ。って優しく言うと聞いたらわかるかなって帰ってくる。私の手をつかんでいるエールの逆の手はエールの心臓部をぎゅっとつかんでいる。これはきっと、すでに人の悲しみを感じたんだってその瞬間で私は理解して優しく笑って誤魔化した。
シャツを片手でなんとかボタンを止め終わった私はコートをかけるだけかけて甲板へとエールの手をにぎってから駆け出す。本編に主人公がいないってどういうことだ。ちゃんと責任は足してくださいお嬢さん。
「 はあ〜?無謀ねぇ。あんな小舟じゃ、陸にたどり着けるわけないじゃん 」
「 イリア、どんな状況? 」
「 見ての通りよ、小船で逃げようとしてるってとこ 」
見てみれば、豪華客船並の大きさの船が襲われていて小船が二隻波に揺られていた。中型の船が襲っているような現状にチャットの唸る声が聞こえる。
その状況を聞いた私にエールがちょこんと私の横に並んだ。自分で言うのはなんだか悲しいけれど私イレギュラーなんですから私より前に来て堂々とお話を聞いて下さい主人公。期待しないでねって自然といわれている気がしてちょっと悲しくなってきましたお姉さんは
「 いえ、この辺りにはアメールの洞窟があります。そこへ身を隠すつもりなんでしょう 」
「 小船で逃げる必要があるってことは、何処かのお偉いさん、とか? 」
「 …これは名をあげるチャンスでは!!ボク達で救助して差し上げましょう! 」
思わず口挟んじゃったけど…お前、海賊目指してるのに人助けるとかどれだけ良い人なんだ。しかもガッツポーズで目をキラキラさせてる姿はまさに子供じゃ、いや子供だ。子供船長だし。でもその名を上げるって海賊としてじゃなくてギルドとして名が挙がるだけだぞ、本当に。
「 かといって、ボク達だけで救出には説得力が欠けそうですね 」
よし、お姉さんはそろそろ眠気もまたピークに戻ってきたし洗濯物干しながらゆったりとお昼寝するのも悪くないか
「 浅葱さん 」
「 …何かな、キャプテン 」
「 今日の仕事は救出なんていかがですか? 」
ピシ。と動きを止めた私にチャットがゆっくりと微笑み後ろではエールとカノンノのはしゃぐ声が聞こえる。まさか、あの二人と一緒に行けとこの子供船長は言うんじゃないんだろうか。いや考えるだけなら本当にならないし、行かないって言えばきっとそんな事にはならない。だっていったところで力になれないのは一目瞭然といったところだ
「 浅葱 」
「 浅葱お姉ちゃん 」
じいっと見てくるカノンノとエール。私の背中に流れる汗。逸らせない、その視線
「 わ、わかった。行けばいいんだろ!行けば! 」
「 わーい! 」
おねえちゃん、だなんて呼ばれてえへへって微笑まれてそれを拒否する抵抗力を持たない私に彼女達はニコニコと笑みを浮かべて真っ白な純粋な表情で私を見てくる。だからなんだろうか、断りにくいものがあるのは
「 浅葱、行くよー! 」
「 浅葱お姉ちゃん、早く! 」
「 …カノンノ、エール 」
「「 ? 」」
「
武器を持たずにいくつもりか 」
お願いですから自分の身は自分でお護り下さい
これは遠足じゃないんだからな( 私は人に刃を向けられるんだろうか )
( そう思うたびに )
( 指先が震えるって言うのに )
10/0820.
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