真っ白い紙に気持ちを書いた。『世界が幸せになりますように』と。救うとか救われないとか人の価値観の違いだろうし私がそう救われますようにと書いたところでゲーデが消えてしまうと思うと私はそうはかけなかった。ただ、『幸せ』であれとその幸せの中にあの二人が手をつないでいる未来を思い浮かべて、ゆっくりと折り目をつけていく。遠くまで飛ぶものにしようか、それとも旋回するものにしようか



「 風船にでもすればよかったかなあ 」

「 何の話だ? 」

「 紙飛行機の話? 」

「 …何かやってると思えば紙飛行機ですか、本当に普通の事ばかり考えてますねぇ 」



羽を折っているところでパパチームが私に声をかけてきた。いや、そういうのは別にいいんだけど紙飛行機は確か前に重心がかかった方がよかったんだっけな。マオとか作るの上手そうだし呼べばよかったかもしれない。はじめから選択肢をあやまったようです!



「 まあ、鬼畜変人みたいにならなくてすむのなら普通でいいや 」

「 変人については貴女が一番ですから安心してください 」

「 いや、ジェイドじゃなくてハロルドのこと、なんだけど 」

「 どちらにしろ変わりませんよ。貴女もハロルドも 」

「 …クラトス、これって私馬鹿にされてるんだよね 」

「 …そういう時もあるだろう 」

「 …うん、ごめん 」



聞くタイミングを間違えたような気がする。くっそう、なんだか滑りっぱなしな気がするのはきっと気のせいではすまされないんだろうなあ。やっぱり、前にジェイドに言われたとおり突っ込みとかのセンスが落ちているとしたら私は人間として駄目になっているのかもしれない。今度チェスターに突っかかってみよう。そうしたら真相があきらかになるかもしれん…!



「 …ところで、何故紙飛行機なんだ 」

「 え? 」

「 意味もなく作っていた訳ではないと思ったんだが 」



必死に娘に話しかけるお父さんのようなクラトスが妙に微笑ましくて口元が緩むと頭を捕まれたような、いやミシミシ言ってる!多分これって陰険腹黒鬼畜眼鏡なんだろうけれど痛いって言うかなんかわかんないけど、頭の中央部がズキズキするんですが!!なにこれ頭痛!?人為的頭痛!?



「 で、意味はあるんですか? 」

「 今頭を押さえつけてくる陰険腹黒鬼畜眼鏡から助けてもらおうと思って、紙飛行機を飛ばす予定でしいったたたたたた!! 」

「 すいません、煩くてよく聞こえませんでした 」

「 死にさらせ、この陰けんんんんんんんんん!! 」

「 すいません、馬鹿のせいでよく聞こえなかったんですが 」



このまま負けたままでいられるか!クラトスはだんだん呆れてきているけれどもうこればっかりはお父さんといえど負けていられん!35に見えない35と身体年齢が28歳のお父さんを敵に回そうと、も…いや、勝てない気がしてきた。どうしよう



「 やだなあ、35にもなると流石に耳が遠くなるのかなああああああああああ゛あ゛あ゛!! 」

「 おや、手が滑ってしまいました 」

「 ジェイド、ほどほどにした方がいい。ロイドみたいになっては手が追いつかん 」

「 クラトス気付いてたの…? 」

「 すいませんね、つい可愛い娘ほど苛めたくなるもので 」

「 可愛い娘に対するDV!? 」

「 褒めないで下さい 」

「 ほめてねえ! 」



ロイド、手遅れって言われてるよ。いや、確かに掛け算でつまずいてるところを考えると確かにそうかもしれない。ロイド、大人になろうぜ!いや違うな、ロイド、大人に認めてもらえる頭になろうぜ!のほうがいいのかもしれない。今度すれ違いざまに言ってみよう



「 それで、その紙飛行機に意味はあるのか? 」

「 …ある、と思う 」

「 飛ばす事に、意味があるとしたら何の意味がそこにはある 」



疑問符もつかないようなその声に、私はそっと目を瞑って白い願いを続いていく青へと手を離して



「 飛ぶ、というのは人には出来ないから代役として飛んでもらったの 」

「 …代役、ですか? 」



カモメのように海面の上をすべるように飛んでいくその飛行機は風に押されて遠く小さくなっていく。もう手の届かない場所へと飛んでいってしまうその純白を追いかけずに足を止めて見守るその先に



「 出来ることをするならば、出来ないことをほかに押し付けるのも人だってこと 」

「 …貴女らしい意見と褒めるべきか、無謀だと素直に言ってあげるべきか悩むような事をいいますね 」

「 普通のことをやるくせに、意味は普通じゃないと素直に認めてくれればいいのに 」

「 素直なんて私に似合わないでしょう? 」

「 そうだね。クラトス、は 」



私の書いた文字が読めなくても意味はわかったかもしれない。日本語ではっきりと書いたあの言葉に。『世界が幸せになりますように』と大きく書いて、下に戸惑いながら



「 遠くまで、羽ばたくといいな 」

「 …うん 」



初めての羽ペンで書いた言葉は、



( バットエンドなんて知りたくないという我侭 )
( だけど、我侭を私は手放した )
( 何処までも飛んでいって、消えてしまえばいい )
( 悲劇なんて始めからなかった、なんてゲーデがここにきてくれればいいんだ )

11/0304.




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