今日も疲れたなあ。でも明日も何かあるんだろうし、気は抜けない。ここにいる限り私は私自身から気を抜く事は出来ないんだろうから、もうなんともいえないけれど気合入れっぱなしになってしまう。本格的にアワユキに連れて行ってもらって温泉に入ってこないと駄目かもしれない。だったらティアとかミントとかメロンを連れて行って本当に湯の上に浮くのかという実験を



「 あ、あれ、エール? 」

「 …おやすみ前に、ききたいことがあったんだけど、だめだった? 」

「 そんなことはないけれど、 」



如何わしい発想の後に純粋を目にしてしまうとどうも心がえぐられるような痛みを覚えるのは何でだろうか。純粋純真はやはり悪をも貫いてしまうんだとしたら恐ろしい以上の威力があると思うんだ。主に毎日私が殺される事になりそうです



「 じゃあ、寝る前に聞きたい事ってなにか教えて? 」

「 うん。あのね、 」



私のベットの上で座って、足をぷらぷらとさせているエール。他の女の子の部屋でならいいけれど男の子の部屋でそんな事したら駄目だからね。許されるとしたらジェイドとクラトスとユージーンくらいだから。でも確実にお叱りを受ける事には変わりはないんだろうけれども。私だったらそんな自殺行為はしない。だって、ロイドの部屋でもう怒られすぎたからね!もう嫌だね!



「 父親が娘をみるようにって、どういうこと? 」

「 え 」

「 わたしには、お父さんもお母さんもいないから、わかんなくて 」



クラトスと、ジェイドどっちがいいんだろう?
いや、二人セットで夫婦にしようか。クラトスが不器用なお父さんで、ジェイドが腹黒お母さん。で、私が邪心の渦巻くおねえちゃんで、カノンノがエールの一つ上のお姉ちゃん的な感じでいっそ家族計画、いや、でもお母さんはパニールか…



「 『大事』と『大切』は、わかる? 」

「 うん。わたしにとってそれは、浅葱お姉ちゃんで、皆だよ 」

「 父親って言うのはね、自分の娘の事を大切に思うの。だから、自分の手で大事に大事に育ててくれる 」

「 …だいじ、に 」

「 目に入れても痛くないって、言うくらい可愛がるんだよ 」



私の知っている中ではクラトスが一番にエールをそんな風に可愛がってくれているのかもしれない。ロイドっていう息子に手間をかけながらエールに不器用な愛情をむけてくれている優しいその関係が、もしかしたら私のせいでこの子には当たり前になってしまっているのかもしれないや。



「 それが、お姉ちゃんの言ってた『あい』? 」

「 …そうだね、愛だよ。愛するってこと 」

「 わたしには、まだよくわかんないけど、『あい』なんだね 」

「 エールはそのうちわかるかもしれないよ 」

「 え? 」



いろんな人に愛されているという事実を。
ディセンダーとしてじゃなくて、エールという一人の人間が愛されているということに



「 ううん。なんでもない 」

「 秘密なの?秘密じゃわかんないよ? 」

「 そんなに知りたい? 」

「 知りたい!教えてほしいの。お姉ちゃん、教えて? 」

「 大丈夫、自分でわかるときがくるから 」



時が経って私が愛されていたという自覚を持つときが。ディセンダーとして世界樹に帰っても、愛を思い知ってさびしいと泣く時があると思うから。寂しいは逆に愛を知っているんだから君はきっと、愛を知る。



「 あい、 」

「 うん 」

「 お姉ちゃんの世界ではあいってどうかくの? 」

「 すずちゃんと同じ国にもある字なんだけどな 」



紙を用意してペンで書く愛は、久々に漢字を書いたからなのか歪んで見えて少しだけ複雑な気持ちになる。漢字とひらがなを駆使した手紙をすずちゃんに書いた時なんて、すずちゃんはスラスラ読んでくれたけれど他の皆は読めなくて首をかしげていた気がする。ちなみに書いた内容は『味噌田楽って美味しいよね』と書いた記憶がある。多分だけどおなかがすいていたんだと思うんだ



「 私の書くこの愛には『心』があるんだよ 」

「 こころ、 」

「 行動じゃなくて、心理的な…いや、想う気持ち。怒るとか、嬉しいとかそういう気持ちの中の一つに愛があるって思っていいんだよ 」

「 気持ち?気持ちに愛があるの? 」

「 その愛は、『真心』とも言うの 」

「 まごころ? 」



私がゆっくりと頷くとエールの目が爛々と輝き始める。その気持ちをまっすぐにゲーデに伝えて欲しいんだけど、この子にそれが伝わるかなんてわからなくて。今ある私の知識を振り絞って必死にいろんな事を教えるとしたらそれは



「 偽りや飾りのない心 」

「 嘘とか、余計なものがないってこと? 」

「 そうだよ。真っ直ぐな気持ち、大切な、気持ちの一つだから 」



手を伸ばして触れたその頭に、嬉しそうに笑顔にかわる私の妹。伝われ、伝われーなんていったらくすぐったく笑うんだろう。それでも私は君に知って欲しいから、ゆっくりと私は息を吸い込んだ



( 私は大事な妹達を愛してるし )
( なによりも )
( 一番君に知って欲しい感情なのかもしれない )

11/0303.




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