「 何、今の…?まるで頭の中に何かを書き込まれたみたい 」



紫色の霧の中で天井とへとふわり、ゆらり浮遊する光を目で追いかけていたら私の目にリフィルたちが映る。リフィルは一度目を閉じて、手順を確認するように数回頷き小さな声で何か呟く姿が見えた。見えるだけで触れようとも、私の頭に書き込ませようとも思わないその動作の意味を、ただ見つめて満足してしまう私は



「 ニアタ、今のが世界樹を回復させる為に『必要な事』なのね 」



書き込む必要も無いほどにその動作の意味を知っている。だからこそ、不思議にも思わないし、今何が起きているのかも記憶がどんどん掘り起こされていくだけで。話の順番はもうほとんど覚えていなくともその場に出くわしたら何が起こるかなんて知りすぎているから



「 ………………… 」

「 ニアタ…? 」



ニアタの力を使ったあとのこともわかってしまっていて、今は私が何も出来ないという事が胸にじんわりと響いて、またふわっと光があがっていく。うめく声を聞きながら、かすれてしまうニアタの声を耳に入れながら光を目で追う



「 急に…力を使って…、回路…が…一部…した…ようだ… 」



ぽつん、ぽつん、と吐き出されたような言葉



「 カノンノを…頼ん…だぞ…。グラニデの…ディセンダー… 」



機械的な声がただそう言った。エールの表情は私からでは見えないし、皆の顔は今の位置から見えずにゆっくりと足に力を入れる。何も無かったかのように振舞う準備をしなくちゃいけない。理由は『見張りをしていた』で十分だけど、誰かこの光を見ていたら、



「 …一旦戻りましょう 」



この浮遊するマナの光を誰か見てしまったら、



「 これから取り掛からなければならない事がたくさんあってよ 」



なんて思われて、なんていわれるんだろう。まるで雪のようにふわふわと落ちるではなく上がっていくだけの蛍みたいな光をこの子達は何と思ってなんて言葉に表してくれるのか、考えるだけで指先の痺れが酷くなるような気がした



「 それに…、私達ではここの仕組みを理解出来ないもの 」

「 ……… 」

「 話は帰ってからね。戻りましょう 」



微妙に痺れる足を軽く叩いてから、腰を上げる。笑顔を作る準備と、泣いているカノンノを守りながら戦う気持ちを作りながら。優しい顔をイメージを作って振り返った



「 浅葱お姉ちゃん 」

「 帰ろうか 」

「 浅葱… 」

「 大丈夫だよ、カノンノ。落ち着くまで、傍にいる 」



今は君を一人にしたりしないし、私も傍にいてあげたいと思うんだ。だから、傍にいてあげる。君が望むまでずっと居てあげるから。たとえ、君の記憶から私がいなくなろうとも、私の体が消えてしまいそうだとしても、心はいつでも君を君達を守りたいと思うんだよ、私は欲張りさんだからね



「 独りぼっちにしないから 」



何度も拒まない限り、この手を差し出すよ



( なんだか冷たくて、 )
( 私の感覚のせいなのか本当に冷たいのか区別がつかなかった )
( それでも、震える手を握り返さない理由にはならないのだけど )

11/0302.




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