「 玉座…? 」



ポツンとカノンノが呟いた。4つのすずらんの花は全て一つの方向を見ていて、その中央にたたずむ様な玉座が一つだけあった。花言葉は『幸福が帰る』。ニアタ・モナドを作る際にそんな事を考えていたんだろうか。それとも前のカノンノが好きだったのか、どちらとも意味の取れるその状況に私は足をすぐに止めた。いや、やめるしかなかった



「 ようこそ…。ここが我々の中枢だ 」



足先がビリビリと痺れて動けないなんて、今言い出したらどんな反応をされるんだろう。確実に心配で、ニアタが空気になるか。それともその逆か。どちらにしろ私はそんな事を言い出す勇気が無くて。ゆっくりとしゃがみ込み、見張りをするように彼女達に半分だけ背を向けてから、刀を立てる



「 さて、グラニデのディセンダー。そなたが存在すると言う事はこの世界に何かあったのではないかね? 」

「 うん、あのね… 」



エールが説明をして、ニアタの無言だけが空間に残っていく。私は足先から伝わるビリビリとした痺れに不意に視線を上げてみたけれど、ぽわん、とあの光が中を舞、ってる?え、ちょ、何これ!この間記憶の方があったけれど、何で急に身体!?でも、さほど痛くないし、痺れるというか足の痺れたとか手の痺れた時と同じくらいだから、痛み止めの効果があるのか?



「 世界に溢れた『負』を消し去る方法とな 」

「 他の世界ではどうかしら?ここを見る限り、あなたの世界は随分文明が進んでいたようだけれど 」

「 残念だが、『負』を消す事は出来ない 」



なんか、前に比べて楽になったのは嬉しいけれど手足麻痺してるみたいでちょっと複雑だ。五体不満足って言葉がシックリきそうな感じだ。小刻みに震えながら、麻痺していく。毒が身体を巡るみたいに激しい痛みはなく、あくまでじわじわと



「 やはり、世界樹でなければ負を無に還す事は出来ないのね 」

「 『無』かね?本当に『無』というものは無い。世界樹が負を無に還すなどとは考えられぬ 」



微妙な微熱が身体を駆け巡っていく



「 しかし、世界樹の傷の回復を促進させる事は叶えられよう 」

「 その方法、私達に教えてもらえないかしら 」



髪の毛、に出てないからまだいいけれど。ここで髪の毛に変化が出てしまったら誤魔化しにくすぎる。どうか、出てこないで。出ても白髪で誤魔化せる程度にしてくれ!それだったら笑いながら何とかできるし、今はなんとか見張りポーズで誤魔化せるけれど実際はそれどころじゃないんだってば!なんか、頭ズキズキするし



「 …我々の故郷、そしてディセンダーが受け継がれた世界の為とあらば 」



頭痛の中でも聞こえるその声は少し嬉しそうだった。
単調にしか聞こえないはずなのに、そこには確かに感情が聞こえる



「 ここまで生き長らえてきた甲斐もあるというものだ 」



表情さえあればきっと彼らは微笑んでいるんだろう。



「 しばし、待たれよ。この世界を覗かせてくれ 」



暖かい声で、優しく微笑む姿が頭に浮かんでゆっくりと目を閉じる。このままだと眠ってしまいそうだ。こんな大事な場所で眠ってはいけないだろうに。この不思議な痺れの中で眠ってしまったらそれこそ危ない。むしろ、彼らにも彼女達にも私の秘密がばれてしまうかもしれない。今度ヘルメットでも買おう。それとも帽子でも、いいけれど



「 リフィルとやら。今から、必要な事をそなたの記憶に転写する。そして、その通りにするがいい 」



ゆっくりと目をあけるとリフィルの周りを赤い円状の光線が現れて、上へと上がっていく。フラフープが上に上がっていくようなそれを見てから私は脚から上がったマナの光を横目で追いかける。ふわりふわりと上がっていくその胞子は



( 少し胸がチクリとした )
( 帰る場所、は、私にあるのか )
( 最後に眠った私の部屋は、どうなっているんだろう )

11/0228.




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