細く枝分かれをした通路を必死に歩き続けて辿りついた先で私達は、足を止めた。顔色の悪いカノンノの手を引きながら歩いていた私が止まると一歩後ろでカノンノが立ち止まる。リフィルが止まればエールが止まり、そして私が止まってという連鎖反応。その中で私達は、ある声を聞く事になる。私は何度も聞いた声を、彼女達ははじめて聞くその言葉は



「 6000年ぶりの訪問者だな 」



姿のない声であり、姿そのものの声。彼らの声はとても機械的で、感情を見受けられないほどの一定の音。そして何よりも『ニアタ』本人であると、この時に誰が思うんだろう



「 誰なの!? 」

「 我々はニアタ・モナド。ディセンダーの玉座なり… 」



天皇や国王のすわる席を、私の世界では玉座といった。つまり彼らにとって、ディセンダーとは天皇に当たる潜在であり、国王ともいう名称を使うとするならばその存在は彼らニアタにとって『絶対』の存在なんだと一瞬で認識してしまう。信仰の対象、世界の救世主、いいかえればディセンダーは沢山の名前を、持つ



「 カノンノ…。その姿は我等がディセンダー 」



そして、救世主を彼らは愛しそうに『カノンノ』と呼んだ。その声に怯えるようにぎゅうっと強く握られた手、圧迫感を感じるほど抱きしめられる私の腕は悲鳴を上げることなく、それを受け止める



「 何ですって?彼女がディセンダー!? 」

「 し、知らない。私…、何も知らない! 」

「 カノンノ、 」



振り返ったエールとリフィルに目を合わせる間もなくカノンノは否定して、私の手と腕を抱きしめる。怯えて、怖がって、小さく震えながら。私はそのカノンノを開いている腕で抱きしめると、小さな嗚咽が聞こえた。一人にしないでって泣くように、私の手をつないだまま



「 しかし、我等が世界は寿命を迎え、ディセンダーも存在しないはず 」



足元に私とカノンノを囲うような赤い円が浮かびあがり、ゆっくりと上がっていく。



「 身体を探らせてもらった。そなたは、我々のディセンダーの因子を持っている 」



小動物のように震えるカノンノを抱きしめながら、私はゆっくりと呼吸をする。まずい、私の体も探られたとしたらニアタ自身にも色んなものが見られてしまったとしたら。いや、流石に記憶までは見たりはしないだろう。記憶の書き込みを受けるのはリフィルだけだったはずだし、それだったら身体の成分表示が…コレステロールが気になります



「 この世界は、我々の故郷『パスカ』の子かもしれぬ 」

「 パス、カ? 」

「 そして、カノンノの近くにいるのは… 」

「 言わずとも、理解はしているつもりだよ 」



異端者だと『君』も。いや、『貴方達』も言うんだろう。例えそうだとしても帰り道がない限りこの世界で生き続けるしかないのだから今さら何を言われても構わないし、今はカノンノのことでいっぱいなんだから。この青い表情と小さく震えながら泣くのをこらえている少女を抱きしめて、



( パニールに会えるまで )
( 彼女の代役だとしても )
( お姉ちゃんは、妹を邪険にできないんだよ )

11/0228.




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