「 見た事もないテクノロジーだわ 」



カノンノの手を握りながら歩く私とエールの先頭を切って前に出たリフィルは、機械仕掛けのような精密な光が走り、奥がぼかされるような紫色の霧のベールをぼんやりと見ていた。正直恐怖よりも何よりも、ちょっとだけワクワクしてきたよ!この建物を解体したらどれだけ楽しいんだろう。考えただけでもドキドキする



「 この建造物を構成している物質だって知らない物ばかり… 」



色んな世界を渡って時を生きる建造物。
どれだけこの建物を作った世界は、技術が発達していたんだろう。これだけ作れればカラオケとかそういう機械も作れたんだろうか。でもこの世界にも歌ってあまりなさそうだしなあ



「 何かの回路の集合体…かしら。まだ、機能しているわ。ここ自体が生きているみたい… 」



多分、一つでも破損すれば大きく響くんだろう。これだけ大きな建造物なんだから、たったひとつの回路がどこかをショートさせるかもしれないし、機能障害にもなりかねない。だけど解体したい



「 まるで主の帰還を待っているかのようだわ 」



主の根源たるディセンダー。
ディセンダーの帰還を待つ、ニアタ・モナド。



「 主って、ディセンダーの事? 」



私の手を握ったままそう聞いたカノンノの表情はやっぱり青い。無理につれてこなければよかったんじゃないかという気持ちと、つれてこなくてはならなかった。という使命感でごちゃごちゃになりそうだけれど、



「 あなたの読んだ文字の言葉が正しいのであればね 」



その文字のディセンダーは果たして、『パスカ』のカノンノだったのか。それとも『グラニデ』のエールだったのか。一度、じっくりとニアタと話をしてみたいところだ。それと、私の未来を。私の先のことを、私と同じような人がいたのかを



「 あなたが読んだ文字の言葉も、本当に正しいかどうか 」

「 調べてみないとわかんないから? 」

「 ええ。カノンノとここが何か関係があるのか、断定は出来ないもの 」



カノンノの可能性も、私の可能性も。



「 でも、便宜上ここをあなたが言う、ニアタ・モナドと呼ばせてもらうわ 」



リフィルはそう笑った。生徒を見るような優しげな表情でにっこりと。カノンノもエールもこの表情は好きなのに今だけは複雑そうな顔でニアタ・モナド内を見つめている。そして、中枢に足を進めようとするたびに私も、カノンノも手が震えてしまって



「 さて、調査を開始しましょうか 」



リフィルの軽い足取りに、私達は戸惑いながら一歩前に出す。強気な事を入る前に言ったというのに、どうしてこんなにも私は情けないんだろう。知りたくなければ聞かなきゃいい事なのに聞かなくちゃいけないときに怖がっている私は、ジェイドに馬鹿にされる時みたいに、本当に『弱虫』で


2
( 一度深呼吸をして、無理やり足を前へ放り出した )
( そして、笑顔でカノンノの手を引く )
( 妹の前で情けない姿なんて見せられるものか )

11/0228.




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