エールに強く手を引かれてついてきた先に、綺麗な銀色の髪を揺らしたリフィルと青ざめた表情のカノンノがいて私は、思わず手を引かれていたのに足を止めてしまった。声をかけてしまえば、壊れてしまいそうな、触れてしまえばそれこそ簡単に、崩れて元に戻れない気がして指先が震えて、息苦しい。私の震えで振り返ったエールに映った私は情けない顔で、泣くのをこらえた少女みたいだった
「 やっぱり、浅葱だったのね 」
「 え? 」
リフィルが振り向いて私が首をかしげる。
どういうことだろう。やっぱりって、言う意味がよくわからない。私、何かしたんだっけ?怒られる要因があるとしたら多分トランプ事件だとは思うけれどあれは遊んでいたら寝ちゃっただけから怒られるような予定は無いんだけれども
「 エールが、もう一人だけつれてくるから待って欲しいって私に言ったのよ 」
「 ああ…だから、『やっぱり』って言ったのか。私だって、予想はついていたから 」
「 ええ。だって、貴女はエールとカノンノや、みんなのお姉ちゃんなんでしょう? 」
「 まあ、それはある意味みんなに関わるための理由みたいなものなんだけどさ 」
何かに理由をつけていないと落ち着かない。この話をしたかったから、誰かといたい。そんなことを簡単に言える雰囲気じゃなくなってきているほどに船の中が暗くて、苦しくて、空元気の振りして笑顔を振舞っても返ってくるのは客の不評だ。道化としてもやっていけないような気がしてきた
「 それで、 」
「 え? 」
「 皆が騒いでいるのが、あの建物なんだね 」
「 あれは、その 」
「 ううん。何で出てきたとか正直に言えば予想はつく。必要ないよ。 」
それに知っているんだから予想も何も無い。カノンノの呼びかけに応じてニアタが反応しただけなんだ。彼ら、ニアタが愛しい娘のような存在に、昔パスカで必死に戦ってくれた最愛のディセンダーに似ているこの世界のカノンノを少し勘違いしているだけで
「 ここに呼び出されたという事は、何か用があるんだろう? 」
「 浅葱お姉ちゃん? 」
久々に男っぽく言ってみたけれど、服装が真逆の所為かちょっとしまらないけれどこれはしょうがないだろう。エールも少しポカンという表情だけれどこれも仕方が無いという事で軽くしめておかないとこれまたスッキリしない。
「 私は、最愛の妹達を護る為に何をすべきか、教えてもらえればそれでいい 」
「
お、おねえちゃん、かっこいい… 」
今は服装に似合わない事を言っているのを軽くスルーします。スルスルスルーします。もうこればっかりは仕方が無いんだってば。いやシャツと黒いパンツ系は動きやすいしそれなりに好きなんだけど、急いで着替えてきたらこれしかなかったんです!
「 突如現れた、謎の建造物の内部を探索したいの。それに貴女の大切な妹達がついてきてくれるというのだけど、私『達』の護衛を頼めるかしら 」
「 傷を治すほうはリフィルに任せるがいいか? 」
「 もちろん、任せてくれて構わないわ 」
「 じゃあ、私は粉骨砕身させていただきます 」
道中の魔物限定だけどね!
「 …お姉ちゃん、 」
「 うん? 」
「 カノンノになんていえばいい? 」
私の服の袖をちょいっとつまんでそう聞くエールに私はゆっくりと微笑む。青ざめた表情のカノンノになんて伝えようか、迷うほど言葉の範囲が増えたのならば不謹慎だとしても私は喜ぶべきなのかもしれない
「 好きな言葉で、誘っておいで 」
「 好きな、言葉? 」
「 うん。エールが言われて嬉しかった言葉で、優しかった言葉を、カノンノに伝えてきたら 」
きっと、あの子は笑顔を作ってついてきてくれるから。
「 わたしの好きな言葉でいいの? 」
「 そうだよ 」
「 本当に? 」
「 エールが嬉しいって思う言葉は、カノンノも嬉しいから 」
嬉しかった言葉、面白い言葉。多少ずれはあるかもしれないけれど、それはとっても暖かくて優しい言葉のはずだから。間違っても口の悪い人達の真似はしないで欲しいけれどこんな所でやらかすような子に育てたような、いや育っては無いはずだから大丈夫だ。大丈夫のはずなんだ
誰かに駆け寄っていく背中は( 向こうの方でカノンノが小さく笑うのが見えた )
( エールは少し照れたように笑って )
( あの子の手を、優しく握る )
11/0228.
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