「 お姉ちゃんどうしよう。カノンノが元気ないの 」
「 カノンノが? 」
食堂にご飯を食べにきたエールは泣きそうな顔で私にそう言った。多分カノンノ以上に元気がなさそうな顔をしているこの子の為にオムライスを作ってテーブルに置くとスプーンをもってゆっくりとすくう。一口食べてから、すぐにニッコリと笑って、すぐに寂しそうな顔をした。やっぱりカノンノのことが気になるらしい。すぐに顔に出るからわかりやすい事この上ないというか、表情に嘘つけないんだろうなあ
「 カノンノがね、わたしには目指すものが無いって言ったの 」
「 目指す、もの? 」
「 ゆめ、だって。皆なりたいものがあるって、でもカノンノは無いんだって、 」
スプーンを離さずにエールは俯いた。不満そうに俯いて、オムライスの湯気にやられて目をパチパチとさせている。それでも、エールはその目を私に向けて
「 ゆめって無くちゃ駄目なの?ゆめってそんなに必要なもの?カノンノが、元気なくなるくらい、悲しそうなお顔するくらい、大事? 」
泣きそうな顔で、私に聞く。
いっそ泣いてしまえばいいのにそれを堪えて私へと当り散らすみたいに何度も何度も言葉を変えて私へと、カノンノに聞けなかった言葉を吐き出して『大事』、『必要』、『駄目』。この言葉を私へと、投げつけるみたいにボロボロと吐き出して、スプーンを握る
「 わたしは、カノンノに何もいえなかった。いえなくて黙ってた!カノンノ、寂しそうだったけど、わたしはお姉ちゃんに優しい言葉を沢山知らないから。知らない事ばっかりだからカノンノに、あんな顔、させた 」
「 うん 」
「 …お姉ちゃんは、ゆめ、ある? 」
「 夢って胸を張っていえないことならあるよ 」
君とゲーデが仲良く過ごす未来が私の夢で。君がゲーデの手をとってこの世界に呼び込んであげるのも私に夢だし、ルカはいつか家に帰れればいいなあとか、アニーが医者になること、みんなの願望が現実になればいいって言うのが私の、夢
「 エール、あのね 」
「 なに? 」
「 夢は大事だし、必要だけどなくちゃ駄目って事ではないの 」
「 …じゃあ、なんで 」
それはきっと意味が欲しいから。自分が生きるには願望を持っていなくちゃ不安定で、怖くて人生に立ち向かえないからだって皆知らないうちに思ってる。こうなりたいから頑張ろう、あんな風になりたいから努力しよう。って、夢は力になるから。目指すってことは生きるのに大事だから
「 夢は、生きるための支えだよ 」
「 ささ、え? 」
「 私たちが生きるための目標 」
「 目標、 」
「 カノンノは、自分が未来で何をしたいのかわからなくて立ち止まってしまったんだね 」
「 みらい 」
瞬きをしながらエールは首をかしげた。それはそうかもしれない。だって、この子は今を生きていることやディセンダーって事でいっぱいでほかに考える余裕が無いから
「 カノンノ自身が見つけるしかない、未来だよ 」
「 カノンノじゃないと、だめ?手伝えない? 」
「 だめ 」
「 でも、わたし 」
そっと、エールに手を伸ばすと大きな目に私が映る
「 だから、カノンノが元気が出るように美味しいものを作ろうと思うんだけど 」
「 え! 」
「 それ食べ終わったら私の依頼請けてくれないかなあ? 」
「 い、依頼? 」
「 そう、一緒に材料を取りに行って欲しいの。それでね、依頼のお礼は美味しい晩御飯をご馳走するから 」
「 行く。カノンノが元気になれるもん。お姉ちゃんのお料理はとっても美味しいから! 」
力強く頷いたエールに私が笑うと嬉しそうに残りのオムライスに手をつけ始めた。カノンノなんでも美味しいって言って食べるけれど、何をとりに行こう。パニールにでも聞いてみるか。いざとなれば好きな食べ物を並べてあげるつもりでいればいいや
「 ああ、それとエール 」
「 うん? 」
「 エールがカノンノに伝えてあげたい言葉も、考えておきなさい 」
「 …うん、 」
未来を見据えた少女に( 君はなんて伝えるんだろうか )
( そう思うだけで、答えの出ていない君の手を握る )
( 彼女の夢は、とっても素敵な夢だと知りながら )
( わくわくしてしまう )
11/0225.
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