朝起きていつもどおり洗濯物を干し始めたら隣に並んで頭を下げてきた女の子。金髪碧眼でどこかスタンに似ているような、それ以上に美人さんが私をしっかりと見てきて思わす首を傾げてしまった。もう直角に。口元はもちろんポカーンな状況で。この方見たことあるし名前もわかってるけれど、いつきたんですか。ちょっと誰か説明をお願いしたいんですけど、ええと、



「 初めまして、お兄ちゃんがお世話になっているようで… 」

「 あ、ああ、初めまして 」

「 リリス・エルロンっていいます。今日からギルドのお手伝いをするんですけど、あの 」

「 私は、浅葱です。ええと、エルロンってことはスタンの妹さんでいいのかな? 」

「 はい 」



美人が増えてしまった。この船にまた美人が増えてしまったよ!どういうことだ、美人ギルドアドリビトムって書かれてしまうぞ!いいんだろうか、これはこれで評判が上がるというかおじ様が増えそうな気がする。美人を見に依頼にくる人とか



「 じゃあ、敬語なし。私、敬語を使われるのは得意じゃないんだよね 」

「 え、でも 」

「 リリス、お願い 」



私は手を止めて頭を下げると、リリスの慌てる声が聞こえた。こうやって家事の方に可愛い人ばっかり増えていって戦闘での心の傷を癒してくれるだなんて、すごくいいギルドだ。でも正反対に今日からマンボウ料理が増える事が間違いないんだろう。マンボウ初試食になるかもしれない。



「 そうしたいんですけど、流石に… 」

「 じゃあ、我慢します 」

「 浅葱さん、子供じゃないんですから 」

「 もうね、敬語ってチャットとアニー以外恐怖でしかないの 」



あの鬼畜眼鏡のせいで。
こんな事を呟いたらリリスが彼と関わる機会を持ってしまうかもしれないから言えないけれど。自分が敬語を使う以外敬語をあまり聴きたくないというのが本音だったりする。最近特にそうだ。あの鬼畜が敬語の癖してキレがないからか。気になるなあ。お父さん



「 そういえば、船のギルドってやっぱり揺れるんですね 」

「 何が? 」

「 食器が揺れててちょっと不安な感じがして 」

「 ああ。立て付けが悪いとかじゃないし、船の揺れに反応してるから 」

「 なんとかなったらいいんですけど… 」

「 流石に私たちじゃ無理があるよ 」



頼むなら今度の改造辺りで頼もう。でも、これで食堂に行ってクレアが同じ事を呟いていたら私は工具を持って修行に出掛けなくちゃならないかもしれないがそれも仕方が無いと割り切るべきか、どうするか。悩みどころです



「 洗濯物はよく乾きそうなのに、流石にいいところばっかりじゃないんですね 」

「 いいところばっかりだったら欠陥がありそうでのってられないよ 」

「 …浅葱さんって結構用心深い 」



ちなみにこの船は換気が上手く行かないって言うのもあまり良くないところだ。船だからしょうがないと言われてしまえばそうなんだけれどもこっそりと窓が開けられる展望室が最近お気に入りになりつつある。あそこお酒も飲めるから換気は大事なんだろうけども



「 そう? 」

「 はい。そう言われないんですか? 」

「 安全について話す相手ってあんまりいないからなあ 」

「 言われて見れば確かにこういう会話って… 」

「 敬語つかれない? 」

「 う 」



リリスが話しに詰まった。
畳み掛けるんだったら今なんだろうか。いや、今畳み掛けたところで彼女がどう反応してくれるのかはわからないけれど私としてはこれで敬語を聞かなくなれればいいんだ。そう素直に言ってみよう。



「 敬語やめようよ 」

「 我慢するって言ったじゃないですか 」

「 いやいや、リリスがつらそうだし、敬語だけってつらくない? 」



自然に。そう敬語を外せ宣言。ナチュラルに優しく、けして責めないようにひっそりと忍ばせる言葉。さあさあさあ!今こそ君の敬語を取り外す時が来たという事なんだよ!



「 じゃあ、徐々にですからね? 」

「 本当!? 」

「 始めから敬語なしは少し無理がありますから 」

「 ゆくゆくはお友達になれませんか! 」

「 え?本当?! 」



お願いします!と差し出した手がアッサリと握られて、リリスがニッコリと笑った。こうやって家事友達を増やしていくんだ!家事とか料理について話せる友達を増やして自分達の腕を磨いていこう計画が開始されました。



「 一緒に皆に美味しいご飯を届けようね! 」

「 ええ!もちろん! 」




( リリス、見てみて、ねじり梅! )
( え?お花の形のにんじん? )
( うん、可愛いでしょう? )
( どうやって作るの? )
( ええと、こうやってまず皮をむいてから切り込みを… )

11/0224.




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