エールとイチャイチャしながら機関室に下りるとハロルドとリフィルとセルシウスから不審な目で見られた。イチャイチャというか昇降機の途中から腕を伸ばしてさあ、飛んで来い!の姿勢から受け止めただけの話であって、別に仲が良すぎる姉妹だとおもってくれれば何の問題もないと思っていたのに、一度だけやってみたかっただけなのに!



「 ご苦労様です。ビクターさんのご両親から御礼がありましたよ 」



チャットにもやった事があるせいか動揺すらしない船長。くそう、どういうことだ。ちょっとくらい何か言ってくれれば今の私は精一杯のボケを返すところなのに!なんでこんなにも冷たい反応なんだろう。傍から見たら変なんだろうか。



「 大体の話は、カノンノに聞いたわ。人の心に悪魔が巣くうって言うけど、正に今回はそのケースよね 」



そのまま手をつないできてしまったけれど誰も突っ込みを入れてくれない。もしやこれが日常風景になっちゃったとかそういうことですか!だから妙に寂しいなあとか思ったらそういう事なのか。普通になったらみんな、都合の悪い事はスルーしちゃうんだね。心ばっかり、大人になりやがって!



「 獄門洞は負が溜まりやすい土地だからね。ビクターは自分自身の負と感応して引き寄せられていったんでしょう 」

「 今回、その人間は運がよかったな。あのまま放っておけば、いよいよ本物の魔物へ変じていただろう 」



ハロルド、セルシウスの順番で続いた話を聞きながら『魔物』という単語にエールが顔をしかめた。が、すぐにニッコリと笑う。一体何があったんだ。



「 負の蔓延で、人の心も暗くなって来たわね 」

「 あちこちで国同士のいさかいや、犯罪が急増しているみたいですが。これって噴出した負のせいですよね 」

「 でも、それも元々人々が生み出してきたものよ 」



人からはじまったのだから、人が何とかしなくちゃいけないのにディセンダーという光を私たちに預けてくれる世界樹。まあ、そのディセンダーの育成方向が正しいのかと聞かれると微妙に頷けないんだけども。それでも元気にやってます。



「 自分は全く関係のないような言い方はちょっと軽率ではなくて? 」

「 うーん、そんな事言われても… 」



この場合、チャットみたいに自覚症状はないのが普通なのかもしれない。感情は当たり前のようにあるし、当たり前のように毎日嫌な事だってあるんだから負だって一日にどのくらい溜まるのかわからない。人が増えれば負も増える。人が消えれば悲しんで負が増える。なんとも無限ループ状態だ



「 でも、たしかにみんな無関係じゃない。この世界で生きる、すべての人間全部… 」

「 どうにかしないと…。せめて、世界樹を回復させる方法はないものかしらね 」



皆、みんな繋がっている。繋がっているから負は生まれる。皆の負が溢れてしまって、世界樹は傷ついて、悪循環が巡りに巡る



「 ああ、忘れていましたが浅葱さん 」

「 うん? 」

「 ビクターさんから、お礼の手紙が、 」

「 ……………いや、ちょっと、用事を思い出して 」

「 いいじゃないですか、ファンレター 」

「 そんなファンいらない! 」



今だってちょっと手がヒリヒリするのに!片手を両手でつかんで握手してくるあの青年ちょっと恐いんだよ!そんな手紙を受け取ってしまったら中身を読まなきゃいけないんだろう?あの爽やかさを考えるとちょっと怖いんです、その手紙



「 さわやかな色じゃない 」

「 アイツ、それが策略なんだよ。くそう、さわやかなやつほど悪が多いからな 」

「 受け取るだけ受け取っておくべきよ? 」

「 …う、うう 」



爽やかブルーの封筒をいただきました。
あけるのが怖いんだけど何処に封印しよう。いや、こういうときは守護神パパトスと一緒に読めば怖くないかもしれない。だって守護神だもの。きっと護ってくれる



「 あ、そういえば 」

「 どうしたんですか? 」

「 大事な事に気付いた 」

「 え? 」




( 返事とかそういう問題じゃなかったわ )
( …浅葱さん )
( 浅葱、時間はあるわよ? )
( いいですよ、お勉強しましょう!必要最低限の勉強ならばっちこい! )
( わたしもする! )
( じゃあ、エールは歴史のテストにしましょう )

11/0222.




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