私の顔が寂しそうだった。というエールの発言から何故か全員で手をつないで歩いてます。完全に一方通行で歩いてます。『よい子の皆さんは車道でこんなことをしたら恐いおじさんとか、焦ってるおばさんに殺されるのでやめようね!』よし、今大事な事言えたからよしとしよう。ちなみに左から順に、コレット、私、エール、カノンノです。コレットの被害にあうとすれば私だけで十分だ!
「 ねえねえ、すずちゃんの故郷はこの近くなんだっけ? 」
ぴたりと足を止めてそう呟いたコレットと差をつけてカノンノが止まったらしく、私の足が思いっきり開いてます。縦開脚。今敵がきたら一番最初に体制の立て直しからはじまるであろうこの危機感。ヒヤヒヤします。
「 この近くにあるアワユキという村なんだって 」
アワユキって温泉とかありそうだよね。きっと隠れ里だと思うけれど、温泉入りたい。そういうイベントが欲しいけれど、既にバンエルティア号内での女子風呂覗き事件は大分起きているので正直なところスパーダが一番危険な気がする。最近覗き被害で一番最初に疑われてパパ組に瞬殺されてるしな…
「 ここにある建造物は、そのアワユキという村の文化のものなのかなぁ? 」
「 不思議な感じがするよね 」
私個人としては何となく懐かしいんだけどね。みんなは不思議って言うけれど、日本に来た外人さんたちは同じような感情を抱いていたのかと思うと、ちょっぴりギャップを感じちゃうなあ。価値観が違うってこういう事なんだろうか。不覚にも納得してしまう私がいるんだけども
「 ここは信仰の場所だって言ってた。伝説では、死者が黄泉の国へ向かう為の門があるんだって 」
「 よみのくに? 」
「 黄泉の国っていうのは天国とかそういうのじゃないかなあ? 」
「 ちょっと違うよ、コレット 」
「 え? 」
上に向かうというけれど、実際は地下の世界とも言われているという説も少なくはないし、辞書にもそんな事が書いてあった気がする。知り合いがなくなったときに小さい頃に思わず辞書を引いてしまったという斬新な幼少期を思い出しながら、少しずつ体制を戻そうとつま先に力を入れる
「 黄泉の国っていうのは、冥土ともいうんだけど 」
「 メイド?あのお洋服の事? 」
「 エール、それは人が幸せになる方だ 」
主に私が幸せになった事をずっと知らないでいてくれ。私の心のアルバムにそっと記録しておいたから。あのワンピース型のメイド服の後ろがどんな風になっているのか本人が着るまでわからないという伝説の洋服は、エールの部屋のクローゼットにしまわれています。
「 っと、話がずれちゃったけど。まあ、黄泉っていう意味は『地下の泉』 」
「 地下の泉、 」
「 それが、今の時代では『地下の死者の世界』という意味になってしまっただけなんだよ。天国、とかはちょっとした人の価値観や生死観のずれで黄泉の国の場所が天か地か曖昧だから正しいとはいえないなあ 」
「 え?お空にも、わたし達が立ってる下のほうにもあるってこと? 」
「 考え方次第だよ。実際に、行ったことは無いしね 」
天国とか地獄とか。
きっとそれは死後を心配した人達が作り出したのかもしれないし、陰陽というもので彼らを知ったのかもしれない。その時代に生きていればわかったかもしれないけれど、
「 ただ、死者を弔った後の道しるべなのかもしれない 」
「 道しるべ? 」
「 迷子にならないように、行く先を決めておいてあげるんだよ 」
いった人だけがわかる場所。
黄泉の国
「 浅葱は、何でも知ってるんだね。リフィル先生みたい 」
「 何でもは知らないよ。わかんない事ばっかりだもの 」
「 でも、お姉ちゃんは色んな事を教えてくれるよね 」
「 お勉強してますから! 」
にっ、と笑って言いながら歩幅を調整する。あと少しすればちゃんと歩ける位置にまでいける気がする。大股通り越して股裂きみたいになってるから。毎日ストレッチとか習慣じゃないから流石に無理があるんだよ!ちょっと、痛いんだってば!
「 浅葱は、前から何でも知ってたよね 」
「 うん? 」
「 カノンノ、お姉ちゃんは何でもわかってるんだよ。知ってるだと不思議になっちゃう 」
「 そっか。そうだよね、浅葱はなんでもわかってたんだわ 」
左足をずりずりと戻しながら耳を傾ける
「 心でわかっていたから、皆の心に溶け込めるんだろうなあ 」
「 まるで私が新しい感染病みたいじゃないか 」
「 でも、そだよね。浅葱っていっつも困った時に傍にいてくれるもんね。わたし、浅葱がだいすきだよ 」
「 私も、浅葱だいすき! 」
「 今最大のモテ期ですか! 」
変な体制でもついつい口元が緩んでしまう。力が抜けるんじゃなくて、嬉しくて力が入ってしまうほどに。主に右手がぎゅうぎゅうと握られてちょっと痛いというか、エールさん。なに、ちょっと、右手つぶれる!つぶれちゃうから!なんかギリギリいってる!
「 浅葱お姉ちゃんは、わたしのお姉ちゃんなんだから、わたしが一番だいすきなの! 」
「 大丈夫だよ、エールから浅葱はとらないから 」
「 うんうん。ただ、だいすきだって話だよ? 」
むすっとしたまま一歩踏み出したエールの手をぎゅうッと握り返すと振り向いた。微妙に足がつりそうだけどここはこらえよう。お姉ちゃんだし、お姉ちゃん耐える時には耐えられる子だって心のそこから信じてるから!攣りそうな足を横目に
私も皆が大好きだからね( そう笑うと )
( 3人が手を離して私に群がってきた )
( ぎゅうぎゅうと身体がつぶされそうになりながら )
( 皆の笑顔に笑ってしまう )
11/0222.
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