「 浅葱 」



淡々呼ばれた私の名前に思わず振り返るとディセンダーがいる。もといエールがあどけない笑顔を私に向けてきて私はもうドキドキ。手元にある洗濯物を思わず落としそうになるほどの殺人急の笑顔にお姉さんのハートは壊れそうです。うわあああああ!可愛い!



「 なに? 」

「 なに? 」

「 これ? 」

「 これ 」



まさに鸚鵡返し。だが可愛い。ああ、子供好きでよかった!エールはチャットの前だとはきはき喋ってるのになんで普段は子供みたいなんだ!可愛いすぎて暴走気味ですよね、そうですよね。わかっているけれどもとめられません。エールはタオル指さしてるし!



「 タオルだよ 」

「 たおるだよ? 」

「 タオル 」

「 たおる 」

「 そうそう 」



また一つ覚えたね、と笑いかければゆっくりと頷いて笑顔を浮かべるエールが可愛くて仕方が無い私としてはどんどん色んな事を聞いて成長してくれればもう何もいう事はありません。子煩悩になりそうだ将来とか考えたら。エールが嫁に行くとか言い始めたら大反対できる。まだ教えることは沢山あります!って



「 とり 」

「 カモメ 」

「 かもめ? 」

「 うん。カモメ 」



じいとカモメを見つめ始めたエールの横でタオルの皺を伸ばし再び干し始めた私にエールが私の袖の端をぎゅっとつかんだ。え?なにこれ。私彼氏的位置に立って、



「 何? 」

「『 ばんえるてぃあごう 』」

「 へ? 」



エールの指を差した先にあるのは漁船。さすがに私達が乗っている船バンエルティア号が何個もあったら伝説が崩れますよお嬢さん。複数の伝説っていうタイトルがあっても確かにかっこ悪くはないとはお姉さん思いますけれども。



「 エール 」

「 ? 」

「 あれは、バンエルティア号じゃないんだよ 」



カクンと横に首をかしげたエールにタオルを干し終わった私は彼女に目線を合わせる。



「 船 」

「 ふ、ね? 」

「 うん。私達も乗る事のできるもの 」

「 乗る? 」

「 そう 」



小さな声で「ふね」と呟いたエールを横目に私は次に出てきたバスタオルを皺伸ばししてから干し始める。理解力は人それぞれなのでゆっくり教えていかないとね。それにあまり汚い言葉遣いするとそのまま返ってくるって言うのが子供と接する時に恐ろしい事だと思う。まさに鏡だ。



「 まるで、浅葱がお姉ちゃんみたいね 」

「 おねえ、ちゃん? 」

「 カノンノ、何言って、 」

「 エール。あのね、お姉ちゃんって言うのは浅葱みたいな人の事を言うんだよ? 」

「 …ちょ、ちょっとカノンノ!? 」



えへへ、と笑いながら言ったカノンノにエールはふわっと子供らしい笑みを浮かべる。うわ、眩しい!だなんて思ってるのでちょっと目があわせられないって言うか視界に入るたびにキラッってしてるその笑み!



「 浅葱、おねえちゃん 」

「 …エール、 」

「 浅葱おねえちゃん 」



にぃって笑うエールが可愛すぎる。義妹?義妹二人目とかいいの?いや、お姉さんとしては大歓迎ですけれども!ああ、もうまどろっこしい、こうなったら



( あ、浅葱?笑ってるの? )
( 別に笑ってないよ )
( ただ、嬉しいだけだよ。だなんていわないけれど )

10/0818.




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