「 きれい…。不思議な所… 」
ひらひらと舞い散る桜。遠めにゾンビとかいるけれど懐かしい場所に思える。そっと手を伸ばした先で掌に落ちた桃色の花びらにそっと微笑むと風に攫われてひらりとどこかへ行ってしまう。心の奥からレジャーシートおいて、お弁当と飲み物もってきて一人でドンチャンやりたい気持ちがあるけれど我慢しよう。これだけ綺麗なものの中でそれをやるのはちょっと気が引ける
「 雪のように舞っているのは、花びら?初めて見たけど、素敵… 」
「 ホント、すごいね〜 」
桃色の中にいる美少女3人を見て微笑んだ私はもう色んな意味で終わっているのかもしれない。だけど、それもまたよし。幻想的風景に包まれた美少女なんて、なかなか見れるものじゃないし、見た目が外人風のために私の目には素敵に映ってます。
「 桜、だよ 」
「 え? 」
「 この花びらは、桜の花びら 」
ふわり、と羽がおちるように揺られて落ちる花びらを受け止めて私は3人に見せた。目をパチパチさせて見た3人はそっと私の手の中にある花びらをつまんでじいっと見る。少しさらっとした手触りが、春を思い出す
「 さくら?さくらって言うの? 」
「 うん。大まかな名前はね。桜にもいろんな種類があるから 」
「 名前を知ってるって事は、浅葱の世界にもあるの? 」
「 うん。春っていう季節に咲いてすぐに散ってしまう儚くて綺麗な花だよ 」
それでいて、夏には青々とした葉がしげって、秋になると色を会えながら落ちていく。冬になれば木だけになって。春になってまた蕾から、花を咲かせる。季節の象徴のような花であり、木だ
「 きせつ?きせつってなあに? 」
「 …そういえば、この世界には季節が無いのか 」
「 え? 」
「 季節って言うのは、私の住んでいた国の特殊な部分みたいなものだからなあ 」
不思議そうに首をかしげるエールの頭を撫でると上に乗っていた花びらが落ちていく。ひらひら、ふわふわ。けして音を立てずに、静かに散っていく
「 区切り、みたいなものだよ。暖かい寒い、とかそういう区切り 」
「 じゃあ、春は暖かいの? 」
「 うん。ぬるい、ぐらいかな。夏があったかいより暑くて、秋は少しあつい、冬は寒すぎるくらい 」
「 4つ季節があるの? 」
「 うーん、まあそうだねえ 」
大まかな話で言えばそんなところなのかもしれない。季節の中で4つあるというべきなのか4つ季節があるのかと聞かれてしまうと何とも答えにくいんだけれどもまあ、それでも納得してもらえるほうであれば問題はない。それに、そろそろ家出青年を連れ戻しに行かないといけないからね
「 じゃあ、行こうか 」
「 そうだね。すずちゃんが、ここは祭事がある時以外は、誰も立ち入らない危険な場所だって言ってたし 」
「 うん、急ごう 」
歩き出した三人を横目に私だけ立ち止まって振りかえる。
「 浅葱おねえちゃーん、先に行っちゃうよ? 」
「 すぐに行くー 」
携帯があればその機械内にこの風景を焼き付けるのに。それができなくて、じっと見つめながら記憶の中に刻み付ける。綺麗に散って言ったその姿を、いつか見た桜に重ね合わせながら。新しい記憶に塗り替えて、目を瞑る。
そうして私が目を開けたときに、
3人が笑っていますように( おねえちゃん、悲しそう… )
( エール、駄目だよ。こういうときこそ私達が笑顔じゃなくちゃ! )
( そ、そだよ!わたし達ががんばらな、きゃあッ! )
( なーにしてんの。怪我したらロイドが心配するよ? )
( えへへ…ごめんね )
( 怪我してないなら、許してあげる )
11/0222.
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