「 セルシウス… 」



ああ!今日もいい天気だったなあ!ひゃっほおおおおおっていうテンションで迎えようとしたのにすぐ近くではセルシウスが悲しげに世界樹を見つめる姿とそれに近づくリフィルがいて一瞬にしてテンションゲージが下がった気がした。冷静を一秒足らずで手に入れるだなんて貴重な出来事はなかなか出来ません。



「 負を、そしてゲーデを世界樹へ送り流さなければ… 」



ゲーデ。その言葉に主に反応して胸が痛む。私から目をそらすあの表情はあまりにも苦しそうで思い出しただけで切なくなる。負の化身、なんていわれていいものじゃないし、世界樹に送り返したらまたあの子は苦しんでしまう



「 しかし、術が無い。傷ついた世界樹には、再び負を抱える力は望めない 」



世界樹の中で、ぐるぐると生まれて消えるを繰り返してしまう。そんな人生など彼に何も与えてくれないのに。苦しんで生まれて怒りをもって消える。人の形をしているのに、誰かの恨みを抱えて心の痛みの行き場をなくしながら、



「 何より、送り流す先は世界樹の中だ。そこは人間の世界ではなく、精霊の世界。精霊の手でなくては出来ぬ 」



あの子は何度も消えてしまったんだろうか。
人は怒りと苦しみの根源としか、思えなかったのかなあ



「 あなたには出来ないの? 」

「 私は、負を浴びすぎて、その力を発揮出来ぬだろう 」



負は、そんなにもいらないものなの?確かに精霊はマナが具現化したようなものだから辛いのかもしれないけれど、彼が人の形をしているのはきっと愛されるためじゃないのかなあって、私は思うよ。今だって、あの子を愛せる自信はあるんだもの



「 今の私は、重く、精霊とは程遠い濃密な身体だ 」



どこかで、寂しいって、痛いって、泣いていたらどうしよう



「 世界に自由に溶けたり、精霊の世界へ戻る事も出来ぬ 」

「 …とにかく。この危機的状況を傍観しているわけにはいかないわ 」



考えただけで不安になってきた。くっそう、どうせならエールのお姉ちゃんだけじゃなくてゲーデのお姉ちゃんにでもなれればよかったのか?いや、でもエールのお姉ちゃんとしてもいたいし、いっそのこと自分の身体分裂しないかな。二つくらいに。



「 一つ一つ、探っていきましょう。私達に何が出来るかを 」



ゲーデに一度避けられてしまったけれど、アレは怖がっていた。
得体の知れないものを始めてみて怖がるのは人も皆一緒。知っていたのはディセンダーと人の負の感情。知らなかったのは人。そして優しさ、もう一つあるとすれば、



「 愛、かな 」

「 お姉ちゃんどうしたの? 」

「 愛を伝える方法! 」

「 あい?愛ってなあに? 」

「 え、知らないのか 」

「 うん 」



じゃあ、今後の課題だね。と私が微笑むと曖昧な笑顔を浮かべたままやっぱり首をかしげた。てっきり知っていると思っていたけれど、これは私がこの子に叩き込むべきなのかもしれない。『だいすき』と『あい』の違いについて



「 愛はね、愛しい。とも言うんだよ 」

「 いと、しい? 」



それはいつか君が、誰かに伝える言葉
いつか、君が誰かを好きになる時に伝えたい気持ちを表す言葉



( 愛と呼ばぬなら )
( なんと呼べば良いのか )
( 君はいつか、そのもどかしい気持ちを知るんだよ )

11/0221.




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